「シンプルにおいしかった」こどももびっくり 食糧難時代の“救世主”⁉セミを食べてみた!

静岡県浜松市で、自分たちで捕まえたあるものを食べる体験会が開かれました。近い未来に懸念されている食糧危機の救世主になるかもしれないその食べ物とは?

8月7日、浜松市の中心部にある市民の憩いの場・浜松城公園に集まったのは、およそ40人の子どもたちです。手には虫取り網に、虫かご。公園の林に生息する、ある生き物を捕獲するというのです。それは…

山口駿平記者「子供たちが公園でセミ取りをしています。実はこのセミがきょうの食材なんです」

子どもたちが狙っているのはセミ。中でもメスのセミが、肉厚でおいしいというのです。炎天下の中、こどもたちは林の中を駆け回り、食材を探しました。気がつけば、虫かごはセミでいっぱいに。

なかなかリアル…ですが、セミも食べられるんです

「油の中にセミを入れたら?」

日本では昔からハチノコやイナゴなどを食べる文化がありましたが、今回食べるのはセミ。中国や東南アジアに加え、アメリカの一部でも食べられているといいます。

今回、参加した子どもたちの多くが昆虫食を食べるのは初めてだといいますが、「食べてみたい」「楽しみ」とみな興味津々。では、いったい、どんな味がするのか。浜松調理菓子専門学校(浜松市中区広沢)に場所を移して、いざ、調理開始です。

まずは、昆虫食を広める団体のメンバーから食べ方の説明を受けます。もちろん、生きたまま食べるわけにはいきません。セミの場合は体内に寄生虫などがいる恐れがあるからです。焼くか、揚げるかして必ず火を通します。

専門学校の講師「油の中にセミを入れたらどうなる?」

子どもたち「飛ぶ」

専門学校の講師「(調理には)コツがあります。まずはセミのはねをもって羽ばたかないようにして…」

熱した油の中にセミを頭から入れると、鳴き声も徐々に小さくなり…こどもたちも思わず「あ~」

専門学校の講師「ごめんね。美味しく食べるからね」

今回の体験会、生き物の命を大切にいただく、という願いも込められています。

中国やアメリカなどでも食べられているセミ

セミの素揚げができあがると、これで中華料理を作ります。この日のメニューは「エビチリ」ならぬ「セミチリ」セミのチリソースに、セミのチャーハンです。皿の中心にはセミが…さっそくいただきます。

山口駿平記者「セミのチリソースをいただきます。見た目は結構強烈ですね。味は…ナッツに似てて食感はエビみたいな感じです。チリソースに意外と合いますね」

子どもたちは…

「シンプルにおいしかった」

「セミの味はエビの味に似ていました」

「ピーマンぐらいの苦さかな」

評判はまずます。みんな、おいしくいただきました。

“エビチリ”ならぬ“セミチリ”

セミなどの昆虫は、食糧危機を救う食材として、いま注目を集めています。国連によると現在、76億人の世界の人口は2050年には97億人にまで増加すると予測されています。

そこで浮上するのが「食糧不足」。そこで、高タンパク、低脂肪で栄養価が高く家畜よりも量産しやすい昆虫は、未来の食料として期待されているのです。

今回、会を企画した昆虫食倶楽部代表の夏目恵介さんも「昆虫というのは、育てるのにエサが少なくて済むとか水が少なくて済むとか、実は環境に優しい食べ物」と太鼓判を押します。

すでに昆虫を使ったハンバーガーやスープなどいろんな利用方法も実践されています。さらに最近では、食用のコオロギやカブトムシなどの自動販売機も登場。昆虫食の注目度は、日に日に増しています。では、調理した側は?

浜松調理菓子専門学校 友永茂雄校長「みんな昆虫食ということではじめは『えー』って形だったんですけど、食べていただいて、食に興味を持っていただいた。興味本位で昆虫を食べるのもいいですけれど、興味本位で終わってほしくないというのもある」

近い将来、私たちの食卓にも、昆虫が食材として並ぶ日がやってくるかもしれません。

セミ料理をおいしくいただく参加者=8月7日撮影、浜松調理菓子専門学校

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