悔しい6位。WRC“地元戦”で入賞の勝田貴元「求めていた結果が得られず、満足できていない」

 8月4日から7日にかけて、北欧フィンランドのユバスキュラを中心に開催されたWRC世界ラリー選手権第8戦ラリー・フィンランド。“第2のホームラリー”といえるこのイベントにTOYOTA GAZOO Racing WRTネクストジェネレーションから出場し、総合6位入賞を果たした勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)がラリー終了の翌日、TOYOTA GAZOO Racing主催のオンライン取材会に出席。自身の戦いを振り返った。

 ラリー・フィンランドは、シリーズ屈指の高速グラベル(未舗装路)ラリーとして知られ、WRCのトップドライバーたちからも高い人気を集めている。また、勝田が所属するTOYOTA GAZOO Racing WRTにとっては、開催地がチームの拠点があるユバスキュラであることから“ホームラリー”として位置づけられている。それは日本を離れユバスキュラに移り住んで6年になる勝田にとっても同様だ。

 そんなWRCフィンランドで総合6位入賞を果たし、開幕からの連続入賞ラウンド数を「8」に伸ばした勝田は今戦のリザルトに対し、「個人的な気持ちとしては非常に悔しいというか、求めていた結果が得られなかったのであまり満足できていないのが正直なところです」と心情を明かした。

 勝田は今回、地元でのラリーの目標に表彰台獲得を掲げていた。そうしたなかで迎えた競技初日は、オープニングのスーパーSSでポディウム圏内のポジションを確保。ユバスキュラの市街地で行われたショートステージ(SS1)のスタート直前に、ハイブリッドブーストが使えなくなるトラブルに見舞われながらも3番手タイムを記録してみせる。

 森林地帯の高速グラベルステージでの戦いとなった競技2日目も、午前中のSSで360度スピンがあったが大事には至らず。また、自信を持って迎えた市街地でのSS6“ハルユ2”でベストタイムを記録するなど、この時点では「目標としてた表彰台争いに、まだまだ絡んでいける感じだった」という。

 しかし、午後になると上位陣とのギャップが少しずつ開き始める。この要因にはリスク回避の考えがあったと勝田は説明した。

「クルマのフィーリングは悪くなかったのですが、パンクのリスクが非常に高いステージがあって、そこでリスクを避けた走りをしすぎてタイムをロスしてしまったのは反省点のひとつです」

 また、この日の最後ステージとなったSS10では、大幅なタイムロスにはならなかったものの大きくカウンターステアを当てた際に誤ってステアリング上のボタンを押してしまうミスがあり、一時的にハイブリッドが効かずエンジンもセーフティモードに入ってしまうシーンがあった。

ユバスキュラ在住6年の勝田貴元にとって、『ラリー・フィンランド』は第2のホームラリーだ

■改善を求めたセッティング変更が、かえってバランスを崩す結果に

 総合6番手で迎えた土曜日、午前中に雨が降ったこのデイ3のステージが勝田を悩ませることになった。彼によると、フィンランドのステージは水はけが良い路面であるため、雨が降ってもなかなかグリップレベルは落ちないという。もちろんすべてのコーナーに当てはまるわけではないが、感覚的には多少濡れた方がグリップが上がるとも。

 そういったコンディションに対し、勝田は「とくに午前中に自分のドライビングがうまく合わせられなかった」と述べた。

「プッシュできるところで抑えすぎていた、というのが午前中の反省点でセッティングを変更したり、走り方を変えるなどいろいろトライしてみましたが、しっくり来ませんでした」

「路面がほとんど乾いた午後もセッティングを少しだけ変え、フロントのグリップを補うかたちで行ったのですが、それが悪い方向に進んでしまいクルマのバランスを含めて自分のドライビングのリズムをさらに崩すことになりました」

 その影響もあってか、3日目最後のSS18でスピンを喫し30~40秒のタイムを失った勝田だが、最終日に向けたセットアップの変更が奏功しデイ4のSS19~22、計4本のステージではフィーリングが改善されたマシンでトップドライバーたちと遜色のないタイムを刻み、最終的に総合6位でラリーをフィニッシュした。

 目標に掲げた表彰台を争う位置に留まれなかったことについて、土曜日の走りが「分岐点になったと思っている」と勝田。

「改善点という意味でもそこが一番です」

「土曜日に自分のミスで大きくロスしてしまった部分とリズムをうまく掴めなかった部分、そういったところが今回の大きな敗因だと思うので、今後に向けてデータやオンボードなどを見つめ直していきたいと思っています」

 次戦以降のラリーに向けての意気込みを求められた彼は、「まだまだ自分の実力不足で、いいタイムを刻めた部分もありましたけど同時にまだまだ足りない部分も多かったので、そこは次のグリース(第10戦ギリシャ)ですね。タイプはだいぶ違うグラベルですが改善していきたいと思います」と語った。

「次戦のイープル(・ラリー・ベルギー)はターマック(舗装路)のラリーで、昨年クラッシュを喫しているイベントのひとつでもあるので、本当にステップ・バイ・ステップで。ターマックは第3戦クロアチア以来になりますし、自分の中でまだまだ改善点が多いラリーだと思うのでここでしっかりと大きな経験値を積み、(第12戦)スペインにいい流れで行って最終戦ラリージャパンにつなげるためにも、まずはこのターマックの1戦を終えたいと思っています」

勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第8戦ラリー・フィンランド

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