家族仲を悪化させることも…「相続」の問題、対策が必要になるのはいくらからなのか

お盆期間には帰省して家族で集まる、という方も多いのではないでしょうか?

いつも昔話に花を咲かせている間に、あっという間に帰宅の時間となり「じゃあ、また年末か来年に」ですって? なんて……嘆かわしい! せっかく家族で集まる機会、昔話ばかりしているのではなく、もっと大事な「相続税」の話もしてほしい、お笑い芸人で本物の税理士・税理士りーなです。

「いや~、うちは財産なんかないからなぁ」と、ほったらかしにしておいたら、実は不動産がすごい価値があって税金を納めることになったり、家族の知らない財産が後から出てきて大モメしたりと、大変なことになるかもしれませんよ!

基本だけでも知っておいて、自分たちには何ができるのかを考えておくことがオススメです。


相続税とは? どんなものが相続資産になるのか

「相続」とは、人が亡くなったときにその方の財産を、配偶者・子どもや親、兄弟などがもらって引き継ぐことをいいます。相続税はこうして、亡くなった方の財産を受け継いだ人に対して、財産の額の大きさに応じて課される税金です。

相続税の話をする前に、どんな財産が相続の対象になるのかを確認しましょう。

現金・預貯金、株式・投資信託、生命保険・死亡保険、不動産(土地・建物)、
金などの貴金属、ゴルフ会員権、マイカー・家財、書画・骨董品など

こんなに色々あるのです。相続財産は現金や預金だけと思っていると、思わぬ相続税額が発生することになります。

・不動産がいったいいくらぐらいの価値なのか?
・生命保険の受取額がどのくらいあるのか?
・配偶者や子どもの知らない株や投資商品・金などは無いか?

など、事前に確認が必要です。

財産の洗い出し・不動産の評価は?

つまり、相続税の話をする上で、はじめに「相続財産として何があるのか?」一覧表を作ることになります。「財産目録」と呼ばれているこの一覧表、最近はダウンロードできるExcelなどのテンプレートもあるようです。

持っている財産が「あるかな?ないかな?」と調べながら、上から順に書いていけば良いのですが、この時に悩むのが不動産の評価です。実際の相続税の計算をする時に使用する方法は、調べる資料も色々で計算方法も複雑ですので、ここでは簡単におおよその金額がわかる方法をお伝えします!

土地や建物などの不動産を持っていると、年に1度(4月ごろ)必ず、不動産がある市町村から「固定資産税の納付書」が送られてきます。この封筒の中に、納付書とは別に「課税明細書」という書類が入っていて、ここに固定資産税の金額を計算する時に使った不動産の評価額が書かれています。「価格」とか「固定資産税評価額」という項目です。

この金額は、一般的に時価の7割といわれている一方、相続税の計算で使う「相続税評価額」は時価の8割といわれています。つまり、「8割 ÷ 7割 = 1.14……」となるので、固定資産税の計算に使った「価格」を×1.15倍すれば、おおよその「相続税評価額」になります。実家の固定資産税の納付書が入っている封筒の中身を要チェックです!

相続税は自分に関係ない? いくらから対策が必要か

相続税は相続をした人全てが払うわけではありません。相続する財産の価値が一定金額を超えると税務署に申告が必要になります。どのくらいから気にしなければならないのでしょうか。

相続税は、「(財産 − 基礎控除額) × 税率」の計算式で算出されます。

はじめに、「基礎控除額」という金額をドーンと引いてくれるのです。つまり、基礎控除額よりも財産が少なければ、相続税は発生しないし申告もいりません。

基礎控除の計算方法

この「基礎控除額」は、どのようにして決まるのでしょうか? それは、「法定相続人」といわれる、財産を相続する人の人数で決まります。

・配偶者がいれば配偶者は必ず入る
・その他の優先順位は、(1)子ども、(2)親、(3)兄弟姉妹の順でいずれか1つ

つまり、配偶者と子どもがいれば「配偶者+子どもの人数」、配偶者がいて子どもがいなければ「配偶者+親の人数」になります。配偶者も子どももおらず、既に親が他界している方は「兄弟姉妹の人数」のみになります。

この法定相続人の数がわかれば、あとは次の計算式で求められます。

基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

例えば、妻がいて子どもが2人なら、法定相続人が3人なので、相続する財産が合計4,800万円までなら税金がかからず申告もいらないということです。

3,000万円+600万円×3人=4,800万円

家族の顔を思い浮かべて、法定相続人が何人になるか、数えてみてください。

基礎控除を超えたら少しずつ贈与で対策

計算式に当てはめてみたら、「まずい、ちょっと超えそう……」という方に朗報です!

事前に準備しておけば、相続財産は少しずつ減らしていくことができます。それは「生前贈与」という方法です。つまり、生きているうちに法定相続人に渡しておいて、事前に財産を引き継いでもらうのです。

この時に注意すべきは「贈与税」です。そう、相続をするときだけでなく、生きている間に財産を渡すだけでも税金がかかるのです。ただし、この贈与税にも基本となる控除額があり、1人の相続人(引き継ぐ人)につき110万円までは贈与税がかかりません。

子どもが2人と孫が3人いれば、1人あたり110万円、5人に550万円の財産を渡しておくことができます。きっちりとお金の流れがわかるように、銀行振込などで子や孫それぞれの口座に渡しておきましょう。

ただし、相続税は亡くなった日から3年以内の贈与はなかったことにリセットして計算する、というルールがあります。亡くなる直前に慌てて贈与をしても意味がありませんので、「まだ元気だからいい」ではなく、元気なうちに早めの贈与が安心ですね。

また、死亡保険金なら一人当たり500万円まで非課税で受け取れるルールもあるので覚えておきましょう。

お盆に話し合おう!

とはいえ、相続というのはデリケートな話です。お盆に帰省して久しぶりに会う家族にいきなり「相続財産は何があるの?」と尋ねると、気分を害する方もいるかもしれません。また、相続は「争族」と書かれることもあるほど、引き継ぐ財産があるとわかった途端に仲のよかった家族が一生口を聞かなくなるというのは、本当によくある話です。財産を残す方にとっても、自分がいなくなった後に予期せぬ争いが起こることは望まないと思います。また、なにも相続対策をせずに、想像以上の莫大な相続税を払わなければならないこともあります。せっかく愛する家族に残せる財産なら、より多くを引き継がせたいと考えているのではないかと思います。

最近は「終活」という言葉も一般的になり、早いうちから準備するという方も増えています。「エンディングノート」という便利なツールもあります。このエンディングノートの中には、必ず「財産目録」という財産の一覧を書き出すページがあるので、相続の話をいきなり切り出しにくければ、「終活」という言葉でやわらかく誘導してみるのも良いかもしれません。

帰省を機会に、そんな話題も出してみてはいかがでしょうか。

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