看護学生が徒歩で北九州から長崎へ 『原爆の残り火』をつなぐ「ナイチンゲール平和の灯運動」

北九州市内の看護専門学校2校の学生を含む9校の看護学生約45人が、原爆の残り火をリレー方式で北九州から長崎へ歩いて運ぶ「第2回 ナイチンゲール平和の灯(ともしび)運動」に現在、挑戦中です。

被爆直後の広島で採火された「平和の火」がともり続ける福岡県八女市星野村で採火した「ヒロシマ原爆の残り火」を「ナイチンゲール平和の灯」として、北九州市から約230キロ離れた長崎市・平和公園へと看護学生たちが運ぶ運動は、長崎原爆の日である8月9日に北九州市小倉南区を出発し、終戦の日の8月15日に長崎市の平和公園に到着する7日間の行程。

北九州ノコト編集部は初日の8月9日、北九州看護大学校の学生から八幡医師会看護専門学院の学生へとバトンタッチが行われた「八幡医師会看護専門学院」に取材に行ってきました。

北九州2校を含む全9校の看護学生約45人が参加

昨年は4校が参加しましたが、今年は「北九州看護大学校」(北九州市小倉南区)、「八幡医師会看護専門学院」(北九州市八幡東区)、「直方看護専修学校」(直方市)、「麻生看護大学校」(飯塚市)、「鳥栖三養基医師会看護高等専修学校」(鳥栖市)、「佐賀県医療センター好生館看護学院」(佐賀市)、「武雄看護学校」(武雄市)、「嬉野医療センター附属看護学校」(嬉野市)、「向陽学園看護専攻科」(大村市)の9校の学生約45人が参加。

8月9日の午前9時に北九州看護大学校(小倉南区春ケ丘)を出発し、まずは同校の男子学生メンバーが勝山公園を目指します。勝山公園で行われた平和祈念式典に参加後、北九州看護大学校の女子学生メンバーへと「ナイチンゲール平和の灯」が受け渡され、一行は八幡医師会看護専門学院へと歩みを進めます。

引き継ぎセレモニーでは長崎市長から寄せられたメッセージの披露も

午後2時40分頃、八幡医師会看護専門学院へと到着。八幡医師会看護専門学院の学生たちが拍手で北九州看護大学校の学生たちを迎えます。その後、八幡医師会看護専門学院のナイチンゲール像の前で、八幡医師会看護専門学院のメンバー5人へと引き継ぎが行われました。

この場では、「ナイチンゲール平和の灯運動」のために寄せられた長崎市長、田上富久さんからのメッセージを北九州看護大学校メンバーが読み上げました。

「核兵器がもたらす恐ろしさは、広島と長崎の過去の問題ではなく、世界が直面する今と未来の問題です。核兵器がある限り、私たちは核兵器が使われるリスクと向き合い続けなければなりません。今回ご参加の皆様の、一つひとつの小さな行動がたくさん集まって大きな流れをつくり、平和へとつながっていきます。これからも、核兵器のない世界をめざしてともに歩み続ける、大切な仲間として、一緒に平和の輪を広げていきましょう」(長崎市長からのメッセージより一部抜粋)という言葉は、看護学生たちが平和について改めて考えるきっかけとなったことでしょう。

小倉北区勝山公園から八幡東区まで暑い中、歩いてきた北九州看護大学校のメンバーたちに、八幡医師会看護専門学院の学生たちが冷たい飲み物やお菓子などを差し入れ、交流する様子も見られました。

引き継ぎ後、八幡医師会看護専門学院のメンバー5人は、次の目的地であるJR「鞍手駅」に向かい、出発しました。

午後6時過ぎに鞍手駅へ到着、1日目の行程を無事終えることができたと教えてもらいました。

なお、「ナイチンゲール平和の灯運動」に参加する看護学生たちには、看護師らが車で付き添うほか、社会人サポーターも一緒に歩きながら無理がないよう学生たちをフォロー。どうしても徒歩で進むのが困難な場所は、サポーターが車で学生たちを安全な場所まで移動させます。

多くの人たちに見守られ支えられながら、看護学生たちは「ナイチンゲール平和の灯」を長崎へ届けるべく、今日も徒歩で運び続けています。

『命の大切さ』を学ぶ看護学生として次世代を担う若者に歴史を伝えたい

「ナイチンゲール平和の灯運動」は、歴史の大切な記憶を風化させることなく、これに新しい息吹を吹き込む『小さな平和活動』を提唱する「小さな平和運動連絡協議会」の活動の一環として昨年から始まりました。

「『命の大切さ』を学ぶ看護学生として北九州で起こった歴史的事実(長崎原爆の最初の投下目標は小倉であったこと)を重く受け止め、次世代を担う若者に広く伝えていきたいと考えている」と言うのは、「小さな平和運動連絡協議会」の会長を務める尾崎瑛さん(北九州看護大学校2年)。

「それぞれの学校にあるナイチンゲールの像にはクリミア戦争によって平和への使命を自覚した彼女の思いが込められている。日々この像のもとで学んでいる私たちがこの精神を広く啓発することで『平和とは何なのか』を考えるきっかけ作りとしていきたい」と続けます。

今回、「ナイチンゲール平和の灯運動」に参加したメンバーたちは、黄緑色の揃いのTシャツを着ていますが、そこには「我が手に託されたる人々の幸のために身を捧げん」という「ナイチンゲール誓詞」の一文もデザインされていました。

「人類史上初めてといわれるヒロシマ原爆の残り火を『ナイチンゲール平和の灯』として第二の原爆投下予定地であった小倉から実際に投下された長崎に運ぶ。その小さな一歩一歩のあゆみに『平和への勇気づけ』『核兵器廃絶の文化推進』という意義を身に刻みたいと思う。そしてこれを実行する志ある看護学生の平和への意識を集結し、核問題への気づきを世界に問いたいと思う。大事は小事に宿ると言われる。小さな一歩の行動・実践が大きな変化を促すと信じる」と話すのは、「小さな平和運動連絡協議会」顧問である西南女学院大学教授の中島俊介さん。

8月15日、長崎市・平和公園で今年の活動終了予定

8月14日、最終目的地となる長崎市に「ナイチンゲール平和の灯」が入るタイミングに合わせ、初日に参加した北九州看護大学校の学生2人も電車で合流。戦争の悲惨さ、平和の尊さを広く伝えるために北九州市内でも多く植樹されている「嘉代子桜」の原木がある城山小学校や、校内にある平和祈念館、永井記念館などに足を運び、平和学習も行われるそう。

最終日の8月15日は、原爆資料館を見学後、平和公園内の「長崎市原子爆弾無縁死没者追悼祈念堂」のろうそくへ「ナイチンゲール平和の灯」を献灯し、今年の活動を終える予定とのことです。

※2022年8月10日現在の情報です

(北九州ノコト編集部)

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