株価下落、円安、値上げ…、そんな時代に資産をどう作っていけばいいか。セゾン投信・中野晴啓氏×ウェルスナビ・柴山和久氏に聞く

相場の上げ下げをうまく立ち回る方法はあるのでしょうか。セゾン投信株式会社代表取締役会長CEO中野晴啓氏と、ウェルスナビ株式会社代表取締役CEO柴山和久氏に、不安定な相場での投資戦略を聞きました。


──相場の見通しが悪い時、投資金額や投資先のアロケーション(割り当て、配分)はどう考えれば良いのでしょうか。

柴山和久氏(以下柴山):これはウェルスナビのお客さまからもよく聞かれる質問です。相場が不安定になると不安が膨らみ、円安の時はどうするのが良いか、株価が不安定の時はどうすれば良いかといった質問が増えやすくなります。私の考えは、直感を疑ってみることです。株価が下がると売りたくなり、安全資産に移したいと思います。それは直感としては正しいのですが、過去をさかのぼってみると、実は損失を生む原因になることが多いのです。

中野晴啓氏(以下中野):リーマンショックの時がそうでした。株価が急落して直感的に危ないと感じ、積み立てをやめたり積立額を減らしたりする人が増えましたが、そのせいで株価の戻りを取り損ね、結果として損をしてしまいました。一方で、リーマンショックを経験した中長期の投資家は、下落時の対応を学んだようにも感じています。実際、コロナ禍の急落では投資をやめる人が少なく、むしろ資金が大量に入ってきました。

柴山:そうですね。一時的な下落で現金に戻してしまうと、その後の戻りの恩恵が受けられなくなってしまいます。大事なのは相場の状況で投資スタイルを変えないことだと思います。安全資産に移すなどして、たまたまうまくいくケースもあるでしょうが、それが2度、3度連続してできる保証はありませんし、いずれ失敗して取り返しがつかなくなるなら、長期・積立・分散の投資を続ける方が良いと思います。

中野:再現性がない「当てっこ」は続かないんですよね。読みが当たってお金が大きく増えることもあるでしょうが、1回の失敗で一気に持っていかれます。すると、次は損失を取り返そうとする意識が強くなり、ドツボにハマっていきます。これはプロも同じです。世間的にはプロは上げ下げを当てられると思われているかもしれませんが、パフォーマンスが悪いファンドはほとんどが「当てっこファンド」なのです。

──直感で動きそうになってしまった時に自分を制する良い方法はありますか?

柴山:資産配分は相場の都合ではなく自分の都合で変える、ということを意識すると良いと思います。例えば、退職して株の比率を下げるのは自分都合です。物価が上がって積立投資が厳しくなった時に、生活費や教育費優先で積立額を減らすのも自分都合。相場や周りを見るのではなく、自分や家計を見るようにすると無闇に損してしまう可能性は抑えられると思います。

中野:投資の目的を再認識することも大事ですよね。将来のためにお金を育てることが目的であれば、目先の値動きは気にする必要がありません。値動きを見ていると、つい動揺しますが、目的を反芻することによって右往左往を防ぐことができ、下落相場を乗り越える経験が増えることで冷静に対応できるようになります。

柴山:積立投資の場合は、株価が戻った時のリターンが大きいことも認識しておくことが大事です。リーマンショックの時は米国株が半値近くになり、3年後に下落前の水準まで戻りました。この間、積立投資を続けていた人は、株価が戻った時に下落前よりもお金が増えました。下がって上がったならプラマイゼロと思うかもしれませんが、一括で買うのではなく、株価が安い時も分散してコツコツ買っていたため、その分がプラスになって戻ったわけです。

中野:その点では積立投資のように自動的に買い付けていくことが大事ですよね。「余裕ができたら投資をしよう」と考える人は多いのですが、将来の人生に重要なお金と考えれば、投資資金の優先順位は上位に置く必要があります。例えば、家賃が10万円なら、積立投資の2万円と合わせて、家賃12万円の家に住んでいる、と考える意識に変えていくことも大事だと思います。


次回は、おふたりの投資の失敗談と、失敗を避けるコツを伺います。

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