ウクライナ侵攻、長期化と拡大「失望」 日本の平和に“理念と現実” ナガサキポスト・アンケート(上)

 長崎新聞社は長崎原爆の日(8月9日)を前に、情報窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)で戦争や核兵器、平和に関する意見を募った。県内外の204人が寄せた回答の一部を連載で紹介する。初回は「ロシアのウクライナ侵攻」と「平和への願い」。武力を振りかざすロシアへの憤りとともに、戦争の長期化や拡大に歯止めをかけられない各国や国連への「失望」も目立つ。不安定な国際情勢を背景に、日本の平和維持を巡り“理念”と“現実”が交錯した。
 アンケートは7月15~24日にウェブ上で実施。10~80代が回答し、60代53人、50代50人、40代37人-の順に多かった。居住地は県内が192人、県外は12人。

■胸はり裂け

 侵攻が始まって5カ月余り。子どもを含む犠牲者は増え続ける。多くの人が「許されない」「非人道的」「やるせない」などと、ロシアへの憤りや無力感を吐露。「第3次世界大戦に発展しないよう願うばかり」(諫早・60代無職男性)と危惧する声も複数あった。
 介護施設で働く諫早の30代女性は、戦地の様子を知った高齢利用者が「殺される」「避難せんば」と何日も寝られなくなり、「戦時中を思い出したのでは」と推測する。母親が旧満州(現中国東北部)から引き揚げる途中に生まれたという川棚の70代主婦は「ウクライナ兵士である父親の顔をたたき、泣き叫ぶ子どものニュースを見て胸がはり裂ける」と書いた。

■解決の意志

 33人が「国連」に言及。「無力に失望」(諫早・70代無職男性)「新たな国連をつくるべき」(長崎・60代自営業男性)など、大半はロシアの軍事侵攻に有効な手を打てない機能不全ぶりへの批判だった。
 戦闘が泥沼化する中、ウクライナに武器供与を続ける欧米への意見も。新上五島の10代女子高校生は「かえって戦争の拡大につながっていないか」、南島原の50代自営業女性は「ウクライナを支援する国々も、外交や話し合いで平和的に解決する意志があるのか」とそれぞれ懐疑的だ。
 ロシアは核兵器の使用をちらつかせて世界を威嚇する。長崎の40代会社員男性は「核を持っていればどんな暴力を振るっても直接の制裁には至らないんだ」と感じ、「ウクライナの惨状が将来日本でも起こりうるかもしれない」と日本の防衛に懸念を抱く。

■目を背ける

 戦争報道への受け止めもさまざまだ。「報道される命の重みに違いがある」と悲しむのは長崎の40代公務員男性。
「ウクライナ軍の反撃には前向きな報道だが、そこにはロシア兵の多数の死がある。兵士も市民も命の重みは同じはず」
 長崎の40代パート女性は「報道のたびに目がくぎ付けになる反面、この現実から目をそらし見たくない自分もいる。避難民や戦地のため何かできないかと思うが、毎日の生活に大変な自分たちが優先になる」と複雑な心境を明かす。侵攻が始まった頃と比べて「報道の量が減った」と指摘する声も複数あった。
 「悲惨な歴史を繰り返し何の慈悲も感じないロシアに恐怖を感じる。学校や病院への爆撃は核兵器使用と同等に罪深い」。そう嘆いた佐世保の60代会社員男性は、平和への願いとして「願い求めるだけでなく、過去の戦争がなぜ起こったか考える機会を増やすことが平和と安定につながる」と強調した。(三代直矢)

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