核廃絶は実現するか 否定5割超 露侵攻で暗い影 核軍縮進展求める声も ナガサキポスト・アンケート(中)

 長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)を活用した原爆や平和に関するアンケート(204人回答)で、「核廃絶は実現するか」と尋ねたところ、5割超が「実現しない」と否定的だった。ロシアのウクライナ侵攻が世界の核情勢に暗い影を落としている影響がうかがえる。一方、廃絶を実現しなければ「世界は滅んでしまう」と危機感を募らせる人もいる。

■ 増 強

 「実現しない」の回答で理由に挙がったのが「ウクライナが侵攻を受けたのは核を放棄したから」(長崎・60代自営業男性)。ウクライナは1994年、核兵器を放棄する代わりに、ロシアと米英が安全保障を約束する国際合意「ブダペスト覚書」を交わしていた。核大国が合意をほごにして軍事侵攻し、核のどう喝を繰り返す状況に世界は衝撃を受けた。
 日本を取り巻く安全保障環境に目を向ければ、北朝鮮は核ミサイル開発を繰り返し、米国と覇権を争う中国は核戦力を増強。「北朝鮮、中国、ロシアがその気がないどころか、増強している」(長崎・60代無職男性)と「実現しない」理由として厳しい安全保障環境を挙げる人は多い。

■ 段 階

 広島、長崎への原爆投下から77年。世界にはいまだ1万2千発を超える核弾頭が存在する。「核の抑止力に頼る核保有国の考え方は変わらないと思う。一斉に核を手放すことなど現実的に考えられない」(諫早・60代自営業女性)。
 核抑止は、核兵器を保有することで互いの使用を躊躇(ちゅうちょ)させ、戦争回避につなげる考え。米英仏ロ中に核保有を認める代わりに、軍縮交渉を義務付ける核拡散防止条約(NPT)は現在、米ニューヨークで再検討会議が開かれているが、同条約下ではなかなか進展せず非保有国は不満を募らせている。
 そうした国々が核兵器の非人道性に焦点を当て、昨年1月に発効したのが核兵器禁止条約。保有や使用、威嚇など全面的に禁じる同条約に核保有国は反対し、分断を生む結果にもなっている。唯一の戦争被爆国で、米国の核の傘の下にある日本は署名・批准していない。「まずはなくすことよりも、減らしていくことから」(南島原・30代パート女性)。「実現しない」の回答では、段階的に核軍縮を進める立場の日本政府に賛同する意見もあった。
 ただ日本が条約に参加すべきかを尋ねたところ、「参加すべき」と答えた層が7割強に上った。

■ 共 有

 一方「核廃絶は実現する」と答えた層は、ウクライナ情勢を核抑止の限界ととらえる。「核兵器は平和をつくらないということが証明された。今回、それが明確になった」(諫早・50代公務員女性)。
 核兵器使用のリスクが高まる中、世界は分断を乗り越え、核なき世界への道筋を示すことができるのか。「実現しなければ、核兵器が使われ、世界は滅んでしまうことが共有されてきたと思う。すぐには難しいかもしれないが、必ず実現されると思う」(長崎・40代会社員女性)。(蓑川裕之)

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