戦争・被爆体験 聞いたことが「ある」8割 デジタル技術で次世代へ ナガサキポスト・アンケート(下)

 被爆、終戦から77年。長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)を活用した原爆や平和に関するアンケート(204人回答)で「戦争・被爆体験を聞いたことがあるか」の質問に、8割が「ある」と答えた。継承のアイデアとして、デジタル技術の活用を挙げる人が目立った。

■「家族から」6割

 原爆投下後に目撃した山積みの遺体。旧満州(現中国東北部)からの壮絶な引き揚げ。人を盾にして逃げた兵士としての記憶-。さまざまな体験が寄せられた。
 家族から聞いたという人が122人と最多で、回答者の6割に上った。大村市の20代公務員女性は、祖父から被爆後の身体的症状を聞き「いかなる理由があっても核兵器で人間を傷つけることは絶対に許されない」とつづった。一方、聞いたことがない人は「体験者が周りにいない」「話したがらなかった」との理由がほとんどだった。

■証言映像の保存

 戦争体験者や被爆者のいない時代が近づきつつある中、いかにして継承を図るかは重要な課題だ。そのアイデアを募ったところ、最も多かったのは被爆者の証言映像の保存。臨場感のあるVR(仮想現実)映像の作成やデジタル技術を活用して、被爆体験談や思いを伝える提案も。
 「原爆投下日時を優しいアラートでお知らせ」(長崎・40代パート女性)「8月はユーチューブなどのインターネット媒体で(平和を訴える)CMを流す」(長崎・40代会社員男性)「ハザードマップのように、原爆の被害を他の都市に当てはめて可視化する」(長崎・50代自営業男性)など多彩なアイデアが集まった。

■実感含め伝える

 戦争のリアルを人々に突き付けたロシアのウクライナ侵攻。佐世保の40代主婦は「戦争があると物価が上がり、生活に支障が出ることが身を持って分かった。そこも含めて伝えていくしかない」と書いた。
 学校の被爆講話は重要な継承の場だが、長崎の40代公務員女性は「子どもの精神年齢に合わず、恐怖心を植え付ける」と疑問を投げかけた。次世代を担う子どもたちにどう伝えるか。年代に見合った継承の模索が必要かもしれない。
 長崎の40代パート女性は「ボランティアだけでなく、仕事として市が継承者を雇っていいと思う。駅前や市役所など日ごろから市民が訪れる場所に平和を訴えるコーナーがあれば」。大村の40代公務員女性は、被爆者の代わりに体験を証言する長崎市の『家族・交流証言者』事業を挙げ、「他人でも語り部ができる活動がいいと思う。もっと簡単に誰もが話を聞ける場所や機会を作っては」と提案した。(牧夕莉子)

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