コロナ発熱外来 逼迫 長崎県内指定率 九州・沖縄ワースト2位 ワクチンまで手回らず

 一般診療に新型コロナウイルス感染症の発熱外来、さらにワクチン接種の予約や問い合わせで鳴り続ける電話。「もう手いっぱい。せめてワクチンを急ぎたい方は集団接種に回ってもらえれば」
 長崎市内のクリニック(診療所)の医療従事者から8月2日、長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)に医療現場の窮状を伝える連絡があった。取材を進めると、発熱外来に応じている県内医療機関の指定割合が低い水準だと分かった。
 発熱などの症状がある人が頼るのは、かかりつけ医。ただ7月19日時点で県内の診療・検査医療機関(発熱外来)数は495、指定割合は33%。県医師会の集計によると、九州・沖縄では沖縄の次に低い。
 中でも感染者数が多い長崎市保健所管内は28%と県内の本土地区最低。連絡をくれた医療従事者は「発熱外来を受け付けているクリニックから断られた患者さんも来ている。実態は28%より低いはず」と明かす。

■ 決 意

 森崎正幸県医師会長は一部の医療機関に負担が集中していることを認め、「会合のたびに(発熱外来に)手を挙げてほしいと呼びかけているが、なかなか伸びない」。理由は▽コロナ患者を受け入れているという風評を危惧▽一般診療と発熱外来の区分けをするゾーニングが構造上できない-などがあるという。
 ただ森崎会長は「データ上、発熱外来を受け付けているクリニックの一般診療は減っていないし、ゾーニングできない場合、時間で区切ることも可能」と話す。自身が理事長を務めるクリニックでも発熱外来を数時間に絞って受け入れている。
 「都会では診断をせず、検査キットを配るだけということも起きているが、体調が悪い人は医者の診察を受けたいはず。私たちはそこに応えるべきで、地方はまだそれが可能。医師会の底力を見せるときだ」と決意を示す。8日の週から未指定の医療機関にダイレクトメールを送り、協力を呼びかけるという。
 県の担当者はかかりつけ医が診る意義について「病歴が分かっているし、患者の安心感にもつながる。症状に応じて薬も出せる」とし、協力に期待する。

■ 分 担

 感染急拡大の影響もあり、4回目のワクチン接種希望者は増加傾向にある。長崎市では個別接種を受け付けている医療機関をホームページに公表。希望者が直接問い合わせる仕組み。
 同市の担当者は発熱外来と接種の対応で逼迫(ひっぱく)するクリニックについて「厳しい状況だと思う」とし、「ワクチン接種が逼迫に拍車をかけているケースがあればホームページでの公表を一時的に控えるなどの対応を考える」と話す。
 接種希望に応えるため「集団の間口を広げたい」とし、11、13両日で4回目接種約4700回分の枠を用意。役割分担で窮状を乗り越える構えだ。

© 株式会社長崎新聞社