そつがない内閣改造

 言い間違いや失言で思わずクスリとさせる政治家がいる。選挙の応援演説の最中、候補者の「必勝を期して」と言うところで「惜敗を期して」と言ってしまったのは麻生太郎氏。ほかにもいろいろある▲かつて、自衛隊活動の計画書を「表紙ならば報告を受けた」と言って国民をあきれさせた防衛相もいた。正直に言うほど不興を買う。そんな政治家もいる▲7月末、安倍晋三元首相の襲撃事件で耳目を集める教団と関わるのが「何が問題かよく分からない」と言い切った自民党幹部もいた。こちらから見ると、なぜ「分からない」のか分からない▲内閣改造、自民党の役員人事の名簿にその「分からない」人の名前はない。教団との関係を「自ら厳しく見直す」ことが起用の前提だ、と岸田文雄首相は説明した▲少し前まで「それぞれ丁寧に説明を」と個人任せにしていたが、批判の種をなるだけ除くことにしたらしい。党の派閥のバランスに気を配る。発信力がある人物、政策通を起用する。「そつがない」の一語が頭をよぎる▲政権の安全運転を心がけ、これという失言もない岸田首相らしい-と言えばそうだが、コロナ対策も物価高対策も国葬も、大方の国民は心にもやもやを抱えている。これから求められるのは、そつのない振る舞いではなく、実行力に尽きる。(徹)

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