被爆の実相モチーフに 「8.9平和展」 14日まで、長崎県美術館

被爆の実相をモチーフにした作品などが並ぶ=長崎市、県美術館

 美術表現を通して核兵器廃絶と平和を願う美術展「ながさき8.9平和展」(同展企画委員会主催)が10日、長崎市出島町の県美術館で始まった。原爆投下で原野と化した長崎の街並みなど被爆の実相をモチーフにした絵や写真、前衛的な立体作品のほか、幼稚園児が描いた平和祈念像の絵も展示している。14日まで。
 長崎原爆の日にちなんだ美術界の平和運動として1980年に始まり、43回目。応募全作を無審査で展示する形式で開き、国内外から約130点が集まった。
 長崎市の梶原元子さん(57)の「DAINASI」は一面黒の背景に赤い糸を乱れた形で張った作品で、「核兵器は『平和』と『安心』と『安全』のトライアングルを台無しにする」というメッセージを表現した。
 同市の内藤修子さん(72)の「昭和のボディ」は、さまざまな時代の写真などを貼り付けたトルソーの周囲に、母子手帳や形が全て異なる箸置きなどを配置し赤い糸で連結。今の時代は昭和、平成、令和と引き継がれてきた先にあり、連綿と続く命の絆の尊さをイメージしたという。
 同企画委事務局長の松尾英夫さん(81)は「例年に比べ原爆や戦争を正面から描いた作品が多いかもしれない。戦争の時代を知る高齢の出品者をはじめ、今の世界情勢に危機感を抱く人が増えているのだろう」と話している。


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