彫刻家「田中米吉という宇宙」展 赤れんが30周年を記念し8月18日から

 昨年1月に95歳で亡くなった山口市の彫刻家・田中米吉さんの作品展「田中米吉という宇宙」が、8月18日(木)から28日(日)まで(22日は休館)、C・S赤れんが(山口市中河原町5、TEL083-928-6666)で開かれる。同館開館30周年記念事業の一つで、観覧は無料。 
 田中さん最後の作品「宇宙の無限にあるがまま」(縦3.6メートル、横2.5メートル、高さ3メートル)などの彫刻作品が、ホールⅠ・Ⅱに加え、ロビーにも設置される。さらに、あまり目にすることのない絵画も展示。館全体で田中さんの世界観が演出されるという。

▲「宇宙の無限にあるがまま」

 山口市大内に生まれた田中さんは、幼いころから美術が好きで、旧制山口中学(現・山口高校)、宇部工専(現・山口大学工学部)機械科に進学。その後、教師としての道を歩んだが、美術家になる夢を実現するため、仕事を辞めて上京した。1965年に家業(御堀堂)を継ぐため山口市に戻り、以降は地元から国内外に向けて作品を発表。ステンレスやFRPを素材に用いた現代彫刻で、壮大なスケール感を持つ表現を確立した。現代日本彫刻展大賞など数々の賞にも輝き、作品は埼玉県立近代美術館、美ヶ原高原美術館、ダラス大学、秋吉台国際芸術村、山口県立美術館などに設置されている。「赤れんがの会」(後述)の主要メンバーでもあった。
 「作品が創り出す静ひつな空間からは、ある種のにぎわいのようなものが伝わってくる。ぜひ『田中米吉という宇宙』を感じに来て」と主催者。

30周年迎えたC・S赤れんが

 C・S(クリエイティブ・スペース)赤れんがは、1992年5月に開館。8月9日には、開館30周年記念式典も開かれた。
 同施設の建物は、県立山口図書館の書庫として1918年に建設。図書館の移転に伴い、1929年からは山口県教育会の施設に。その後アトリエとしても貸し出され、若手芸術家のサロンにもなっていた。だが1982年、所有する県が取り壊しの意向を示し、それに反対する市民運動「赤れんがの会」が立ち上げられた。約8年間にわたるその保存活動が実を結び、国の「ふるさと創生事業」を活用しての県から市への移管および改修工事がなされ、1992年に現在の形へと生まれ変わった。以来、文化芸術の受信・発信拠点として、市民に活用され続けている。

▲改修前の「赤れんが」

 1993年に「模範的なリフォームを行った」として、ロングライフビル推進協会から「BELCA賞」を受賞。1998年に「登録有形文化財」に登録。2017年には「25年以上の長きにわたり、建築の存在価値を発揮し、美しく維持され、地域社会に貢献してきた建築」として、日本建築家協会の定める「JIA25年建築選」に登録・顕彰された。

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