鉄壁の防御、一度も戦で使われなかった「最強の城」 福井市の一乗谷城、福井県の城紹介「わが町のわが城」

一乗城山の斜面には敵の横移動を防ぐ畝状竪堀が密に造られた=福井県福井市
宿直跡からの眺め。福井平野や坂井平野を一望できる

 「『最強の城』なんです」。福井県福井市の朝倉氏遺跡保存協会の岸田清会長が力を込めた。一乗谷朝倉氏遺跡にある朝倉館跡の背後にそびえる一乗城山(標高473メートル)。その山頂部に築かれた山城が「一乗谷城」だ。一度も戦で使用されることはなかったが、鉄壁の防御体制だったと考えられている。

 斜面には、敵の横移動を防ぐ畝状竪堀(うねじょうたてぼり)が密に造られ、その数は約140本。全国でも屈指の数だ。二の丸跡には尾根を断ち切って、敵の侵入を防ぐ巨大な堀切がある。

 山頂部には、千畳敷と呼ばれる平たんな場所が開ける。建造物の基礎で、柱などを支える部分になる礎石(そせき)が規則正しく並ぶ。千畳敷跡近くにある宿直(とのい)跡は、戦国時代に見張りがいたと考えられている場所。それだけあって眺望は抜群だ。福井平野や坂井平野を一望でき、天気が良ければ日本海まで見渡すことができる。

 千畳敷跡の約30メートル下方には一乗谷城で唯一の水源である不動清水(しょうず)がある。岸田会長によると、この清水を荒らすと荒天になると言われているそうだ。

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 一乗谷城に通じる登山ルートは四つあり、いずれも徒歩1時間前後で到着する。馬出ルートと下城戸ルートが登りやすい。岸田会長は「城を攻め落とすつもりで登ってみて。いかに堅い守りだったか分かるから」と話していた。

一乗谷城

 朝倉氏が越前を支配した約100年間を通じて、本城としての役割を果たし、山麓の城下町を守っていた。

朝倉氏遺跡保存協会

 一乗谷朝倉氏遺跡が1971年に国の特別史跡に指定されたことを受け、城戸ノ内町の住人でつくる戦国村保存協会が発足、翌年に朝倉氏遺跡保存協会になった。復原町並の指定管理や観光ガイドなどを行っている。会員は47人。

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