57歳独身貯金4500万円「投資が推奨されていますが、私も始めたほうがいいですか?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、57歳独身、会社員の女性。元気なうちは働いて収入を得たいと考えていますが、高齢になった時が不安なため、投資を始めたほうがいいのか迷っているといいます。FPの飯田道子氏がお答えします。


15年間両親の在宅を介護しながら、職場の理解もあり、フルタイムで働いていました。父は10年前に送り、母は2カ月間病院で入院し、亡くなる前の5日間だけ在宅に戻り家で見取りました。それが今年の1月のことです。

そんなに浪費グセはないのですが、退職するまでに少しリフォームをしたいと考えてます。それと、元気な間は働けたらいいなと考えています。ただ一人暮らしなので高齢になってから病気になったらという不安もあります。

本題として、今の首相が自分で投資する事を勧めていますが、今月で57歳になる私の年齢で投資するのはいかがなものでしようか? 今までのように支出を出さないようにしてコツコツ貯めるのが良いのでしょうか?

宜しくお願いします。ローンはないです。退職金は300万くらいでしょうか?

【相談者プロフィール】

・女性、57歳、会社員、独身

・同居家族について:なし

・住居の形態:持ち家(戸建て、近畿地方)

・毎月の世帯の手取り金額:20万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:60万円

・毎月の世帯の支出の目安:15万円

【相談内容】

・住居費:0円

・食費:3万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:0円

・保険料:7,000円

・通信費:8,000円

・車両費:2万円

・お小遣い:1万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:-

・現在の貯金総額(投資分は含まない):4,500万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:60万円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:0円

飯田:今回は、岸田内閣が個人での投資を勧めている今、これからは投資をした方が良いのか、考えている57歳の相談者様です。現在、一人暮らしであり、将来のことを考えると病気になったときなど、不安に感じていることもあるようです。勧められている通り、投資を始めるべきか?それとも、今までのようにコツコツと貯めていく方が良いのか知りたいとのこと。相談者様の場合、どのようにする方が良いのでしょうか?また、これからの生活での注意点などについても、考えてみたいと思います。

手元にいくらあるのかを考える

現在の預貯金は4,500万円。毎年ボーナス分60万円を貯蓄し、3年間で180万円。退職金が300万円ですので、60歳の時点で4,980万円が手元にある計算になります。

実際には、毎月の収入の余剰分もあるかと思いますので、5,000万円以上貯まっているのは、想像に難くありません。

できるだけ長く働きたいとおっしゃっていますので、少なくとも年金の受給開始までは働き続け、受け取る年金額が毎月の支出額の15万円以上なら、預貯金をそのまま残すことが可能でしょう。

以上のことを踏まえ、収入の面から考えると、わざわざ投資を始める必要はないのではないでしょうか? 今までコツコツと貯めていらっしゃっていたようですが、貯金も広い意味では投資とも捉えられます。また、これから投資すべきは金融資産に対してではなく、不安を解消するための投資が必要なのではないでしょうか。

不安を解消する投資は、医療保険などの生きていくための保障を得ることです。毎月の支出に保険料として7,000円が計上されていますが、自分が病気に罹ったときに必要な治療が受けられるような保障が備わっているのかを確認してください。

これからの支出を算出する

相談者様は、退職するまでにリフォームをしたいと考えていらっしゃいます。まずは、どこをどの程度リフォームするのかを決め、予算を見積もることが大切です。

リフォーム内容は「少し」しか書かれていないのですが、リフォームする場所や内容によって費用は変わってきます。一度、ショールームなどへ出かけて、どれくらいの費用がかかるのか、知っておきましょう。また、一定の基準を満たしたリフォームをするときには、国から補助金が受けられることがあります。

主なものとしては、断熱リフォームを行なったときに費用の一部が助成される「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」では最大120万円。高性能な断熱材や蓄熱・調湿などの次世代省エネ建材を用いたリフォームを行うときに助成される「次世代省エネ建材の実証支援事業」では最大で400万円。耐久性や地震に強く、省エネ性があり維持管理がしやすいようにリフォームするときに助成される「長期優良住宅化リフォーム」では最大で100万~200万円です。

いずれも住宅の所有者でなければ適用されませんが、すでに相続手続きが済んでいれば問題ありません。なお、上記の金額は2022年の金額であり、相談者様が利用可能なものをあげています。その他、自治体独自でも助成が受けられる制度もあるようです。お住いの自治体にはどのような制度があるのか、確認することをおすすめします。

その他にも、固定資産税、趣味で使いたいお金や旅行費用などがあれば、支出額として見積もっておいてください。

余裕資金として3000万円を残す

どの程度のリフォームになるのか、その他、どのようなことにお金を使いたいのかを考えて、手元に3,000万円程度が残っていれば、安心です。ただし、年金額が毎月の支出を下回るときには、不足分を確保して3,000万円を残すようにしてください。

また、これから一人で暮らしていきますので、自分に万一のことがあったときには、誰に頼るのかを考えておくことが必要です。

具体的には、病気などで病院へ入院するときの保証人は誰になってもらうのか、財産は誰に相続させるのかなどです。これらを明確にしておけば、親族間でのトラブルも最小限に抑えることができます。

今までご両親の介護に精一杯取り組んできた相談者様。悔しい思いや諦めてしまったこともあったのではないでしょうか?

これからは、自分がやりたいこと、楽しみたいことを考え、それに投資することをおすすめします。始まったばかりの新しい生活。無理せず、身体に気を付けながら過ごしてくださいね。

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