ホンダ・シビックのダルベルト、46戦未勝利記録脱出からのダブル達成/TCRオーストラリア第5戦

 8月5~7日にクイーンズランド・レースウェイで開催された2022年TCRオーストラリア・シリーズ第5戦は、創設初年度2019年の開幕戦以来のポールポジション獲得を果たしたトニー・ダルベルト(ウォール・レーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が、実に46戦を経てのシリーズ初優勝を達成。ジェイ・ハンソン(AWC MPCレーシング/アウディRS3 LMS 2)の勝利を挟み、ダルベルトが週末最終ヒートのレース3も制覇し、未勝利の実力者が本領発揮の3戦2勝を飾っている。

 5月末のシドニー戦以来、しばしの“ウインター”ブレイクを挟んで開催された第5戦は、この時点でポイントリーダーとしてクイーンズランドに乗り込んできたホンダ陣営のエースが、予選から好パフォーマンスを披露する。

 シリーズ創設のオープニングラウンドとなった2019年のシドニーでは、ポールを獲りながらもオープニングヒートを2位で終えたダルベルトは、実にその後2年半にわたって不名誉な未勝利記録が続いてきた。

 しかしQ1でルーク・キング(マオタイ/ジップ・ペイ/ヒョンデi30 N TCR)を、続くQ2で初代王者のウィル・ブラウン(リキモリMPCレーシング/アウディRS3 LMS)やザック・ソーター(チーム・ソーター・モータースポーツ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)らを退け、まずは週末最速の2ポイントを獲得してみせた。

 そのまま土曜夕刻16時過ぎに開始されたレース1でも、フロントロウ2番手発進のソーターを抑え、ダルベルトが首位を快走。3番手にいた初代チャンピオンはターン3でコースを外れ、3周目にはジェームス・モファット(ルノー・スポールGRM/ルノー・メガーヌR.S.TCR)がブースト圧の問題でピットへ。

 さらに7周目にはネイサン・マルコム(HMOカスタマー・レーシング/ヒョンデi30 N TCR)がベン・バルグワナ(バーソン・オートパーツ・レーシング/プジョー308 TCR)と絡んでセーフティカーが出動するなど、20周レースも2周短縮の荒れた展開となる。

 しかしリスタート後も後続の波乱を尻目にホンダ勢がトップ2の地位を固め、ダルベルトが歓喜のシリーズ初優勝を達成。2位にソーター、3位ハンソンの表彰台となった。

「これ以上何も求めることはできないね! ホンダ・オーストラリアとウォール・レーシングにはとても満足しているし、心からの感謝を捧げたい。僕らは長い間、この結果を求めてきた。チームは週末にすべてを完璧に実行し、関係者全員にとって大きな報酬を得たんだ」と、シリーズ創設以来46戦待った喜びを語ったダルベルト。

創設初年度2019年の開幕戦シドニー以来となるポールポジション獲得を果たしたトニー・ダルベルト(ウォール・レーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)
レース1は中段以降で接触アクシデントの多発する荒れた展開となり、セーフティカー出動ののちペナルティも課されることに
2年半にわたって不名誉な未勝利記録が続いてきた選手権リーダーが、その流れを断ち切る勝利を飾った

■最終ヒートはバトルの余波でマージンを稼いだダルベルトが2勝目

 明けた日曜のレース2は前戦のペナルティによってリバースグリッドが大きく影響を受け、10位フィニッシュのジョシュ・バカン(HMOカスタマー・レーシング/ヒョンデi30 N TCR)はオープニングのマイケル・カルーソ(アシュリー・スワード・モータースポーツ/アルフォロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCR)との接触により30秒のタイム加算が課され、10位から14位に降格。

 一方のアーロン・キャメロン(プジョー・スポールGRMチーム・バルボリン/プジョー308 TCR)も、ベイリー・スウィーニー(HMOカスタマー・レーシング/ヒョンデi30 N TCR)とのアクシデントで同じく15秒が加算され、この結果、レース1で10位となったカルーソがリバースポールを手にすることに。

 午後13時過ぎにスタートが切られたレース2で、終始リードを保った元スーパーカー参戦組のカルーソだったが、彼のアルファは残り数周のところでエンジンが音を上げストップ。代わってヒョンデのキングやジョーダン・コックス(スウィフテクスGRM/プジョー308 TCR)らを仕留め、最後の勝負で僚友ブラウンにも競り勝ったハンソンが1.7731秒差でトップチェッカー。第3戦では車両大破のクラッシュを経験した男が今季4勝目を手にした。

 夕刻16時過ぎに始まった週末最終ヒートは、アウディのハンソンに並んで最前列からスタートしたダルベルトが気を吐き、シグナルグリーンの勝負でホールショットを奪っていく。

 前半こそアウディにコンマ差圏内でプレッシャーを掛けられたイエローのホンダ・シビックだったが、中盤以降はさらに背後からソーターが迫り、首位のダルベルトをサポートするかのようにハンソンを攻略。このバトルの余波でマージンを稼いだダルベルトが、初勝利から間を置かずの2勝目を手にする結果となった。

「素晴らしい週末だったね。ポールポジションを獲得し、レースで2勝を挙げ、シリーズでのリードを広げた。残り2ラウンドでシリーズ終幕が近づいていることを考えれば、このマージンを拡大することが最重要だ」と語ったダルベルト。

「6週間後に開催されるサンダウンでの次戦に向け、さらなる成功を収める必要がある。今週に負けないぐらい良い結果を得るため、全力を尽くすつもりだ。サンダウンとバサースト、この最後の2ラウンドに向けて、クルマのパフォーマンスを最大限に引き出すことに集中していきたい」

 すでにランキング2位のコックスに58点差をつけたダルベルトが語ったとおり、続くTCRオーストラリア・シリーズ第6戦は、9月16~18日にサンダウンで争われる。

ペナルティ裁定絡みでリバースポールを得たマイケル・カルーソ(アシュリー・スワード・モータースポーツ/アルフォロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCR)だったが……
レース2ではジェイ・ハンソン(AWC MPCレーシング/アウディRS3 LMS 2)が今季4勝目を飾っている
レース3も制覇したダルベルトが、ランキング2位のジョーダン・コックスに58点差をつけた

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