夏のボーナスが狙われる? 大きな買い物をするときの注意点と対策

ボーナスが入ると「何に使おう?」「前から欲しかったアレを買おう」など、あれこれ思い浮かべながらウキウキしますよね。しかし、普段なかなかできない贅沢をしようとすると、財布の紐も緩みがちになるのではないでしょうか。今回は大きな買い物をする際の注意点とその対策について、解説します。


購買意欲をかき立てる「展示会商法」

街頭での呼び込みや電話、知人からを介し「展示会」に誘い、商品を勧められ購入させるケースです。商品は、着物や絵画、宝石などの高額商品を販売する際によく使われています。

27歳会社員女性、鈴木弓香さん(仮名)のケースをご紹介します。

とある着物の展示会に招待され、知人と一緒に行きました。会場の手前には多くの浴衣が並べられ、本来であれば5,000円前後の価格であろうものが、ワンコイン500円の破格で販売されています。思わず目を引き、足を止めた客に、「この浴衣すごく安いですよね」と声を掛け、どんな柄が好みか、好きな色は何かなど、ヒヤリングし試着ができると案内されます。

試着のために奥へ入るよう勧められると、中には、着付けの先生がスタンバイしており、さらには多くのスタッフが笑顔で「こんなかわいらしい人なかなかいない!」「洋服のコーディネートがかばんも色が合っていて素晴らしい!」など、口々に誉め言葉で迎えます。この“出迎え”にすっかり客も気持ちが緩みます。これが第一段階です。

しかしここでは浴衣を試着しません。鏡の前で合わせるまでに留まります。そこでスタッフが「着物を着たことがありますか?」と尋ねます。さらに「せっかくなので、今日着付けの先生もいるし、ぜひあなたのような人に着てもらいたい着物があるんです。着てみませんか」と畳みかけます。すでに第一段階で気持ちが向上しているのと、断る理由も見つからず、返事は「はい」と答えます。

すると、浴衣を鏡で合わせている短時間で、別のスタッフがすでに着物や小物、帯など上から下まですべてコーディネートを済ませており、そのスムーズな流れに逆らうことなく、気づくと着付けの先生に着つけられ、試着が始まります。

試着が終わるとスタッフ総出で拍手喝采。羨望のようなまなざしを向け、「なんて似合うんでしょう」「ぜひうちのモデルになってもらいたい」とさらなる誉め言葉が降り注ぎます。すでに客の気持ちは最高潮に達します。

ここで「この着物を着てどこに出掛けてみたいですか」「誰と出掛けたいですか」と具体的なイメージを思い浮かべるような質問が入ります。「これを着て、鎌倉に出掛けたい」「京都に行ってみたい」「彼氏とデートしたい」と口にすると、「これで街に出たらみんな振り返りますよ」「彼氏さんも喜びますね」と高揚した気分をさらに高めていきます。

この時点ですでに客の気持ちは「欲しい」あるいは「欲しいかも」と変化しています。当初は全く購入するつもりがなかったにもかかわらずです。

うっかりハマる落とし穴(1)「値引き交渉」

この着物を試着したまま、立ちっぱなしは疲れるだろうからと、イスに座らせます。鏡の前なので、着物姿の自分を見ながら、座り姿もチェックするよう促されます。座って落ち着いた状況を作った上で、金額交渉が始まります。

「もしこれがいくらだったら購入しますか」この質問で客の懐具合を探ります。次に“定価”を提示します。200万円。当然ながら「はい、買います」と即答できる金額ではありません。

ここから始まるのが値引きです。一気に半額を提示されます。とはいえ、それでも100万円もなかなか「はい」とは言い難いでしょう。「今日この場で決定してくれるなら」という前提でもう一声、80万円まで下がります。この短時間で120万円が消えていき、残りでよいというわけです。

「ぜひこの着物をあなたに着てほしいから」「思い切って本当に頑張りました」と汗をかきながら話すスタッフの姿に客も打たれていきます。

うっかりハマる落とし穴(2)「月々の分割払い」

社会人になりたての人だと、これから働きつづけて毎月の収入は入ってきても、まだ貯金がない状態です。ここで提示されるのが月々の分割払いです。「月々3万円ならどうでしょうか」

一度に80万円を支払うのは厳しいかもしれませんが、3万円という比較的手近な金額を提示されるとより一層「支払えるかも」と思うことでしょう。

しかしここで手数料と支払い完了時期に注意を払う必要があります。クレジットカードのリボ払いでは、手数料率が15%です。もし80万円の着物を購入する場合、消費税を入れると元々の金額は88万円となります。

月々の支払金額を3万円に設定すると支払い回数は30回、つまり支払いが完了するのは2年半後です。さらにその合計金額は103万円にも及び、手数料を約15万円ほど支払うこととなります。

落とし穴にハマるのを防ぐには

その場では数々の誉め言葉や素敵な着物に気分が高揚し、冷静な判断ができません。「その場では決められない」と一旦持ち帰り、頭を冷やした状態でもう一度検討しましょう。

リボ払いで2年半も支払い続けることができるか、総額はいくらか、なによりも最初からその値段で売りに出ていても買ったかどうか、じっくり考えてみてください。

もしその場で決断を求められた場合、クーリングオフができるのかどうか、何日以内なら可能か、全額戻るのか、書面で確認できるものをもらっておきましょう。

契約を急がせるということは、それだけ「何か理由がある」ということです。あなたの大切なお金を守るためにも、断る勇気を振り絞って伝えましょう。実際、その着物が売れてしまうことはそうそうありません。売れてしまっていたら「ご縁がなかった」と諦めることも肝心です。

出典

展示会商法とは
大阪市消費者センター

リボ払いシミュレーション
日本クレジット協会

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