海星の1番中堅手・河内夢翔と7番右翼手・牧真測は、野球も知らない保育園児のころから共に歩んできた。有明中卒業後に親元を離れて県内屈指の伝統校でレギュラーの座をつかみ、高校最後の夏、そろって夢舞台に立った。この日も河内は3安打に好守備、牧は長崎大会から全試合安打を継続。ベンチから外れた幼なじみや家族、地域の期待も背負い、チームの3回戦進出に貢献した。
大三東小1年から白球を追う。河内は軟式の有明JBC、牧はソフトボールの三之沢少年でプレー。小学時代のチームは違ったが、家族ぐるみで成長した。ともに海星へ進学した投手の平野暖、今月の四国インターハイで3位入賞した長崎商女子ソフトボール部の村子瑠菜らも物心がつく前から一緒。バーベキューを楽しむなど、にぎやかな日々を過ごしてきた。
「やんちゃだったけれど、この子たちならやってくれるかも」。親たちの予感は的中。厳しい練習と競争、寮生活で心身両面でどんどんたくましくなった。長崎大会優勝の瞬間、河内の母・美友紀さんは「汗なのか涙か鼻水か分からないほど、みんなで泣いた」。
迎えた甲子園。同学年だけで11人いる投手陣で必死に努力してきた平野ら「メンバー外のサポートもなければ、ここまで来ていない」。感謝も胸に2人は1回戦からエンジン全開だった。
この日も初回に河内が二塁打で先制の口火を切り、二回は牧が河内の適時打で生還。直後の2死一、二塁のピンチでは河内が1回戦に続いて「得意」のダイビングキャッチを見せた。隣で守る牧が「野性的。考えていたら間に合わない」と信頼を置く通り、流れを守るビッグプレーだった。
そんな光景を家族はアルプスで見守った。河内の弟で小学3年の愛季君は生後約10カ月で脳腫瘍を患って目が不自由。大好きな運動も満足にできない自分の分まで全力を尽くす「夢にい」を「かっこいい。憧れ」と誇った。牧の父・俊男さんは故障にも苦しんできた息子に「はい上がって頑張った」と目を細めた。
目標は1976年以来の4強。「楽しんで勝つことが何よりの恩返しになる」。そう口をそろえる有明コンビの、海星の夏はまだまだ続く。
