計画段階評価の「東彼杵道路」 国ルート3案、三者三様 事業化へ 進展に期待

東彼杵道路(佐世保市ー東彼杵町)

 佐世保市と東彼東彼杵町を結ぶ地域高規格道路「東彼杵道路」について国土交通省は今年、三つのルート案を示した。道路が整備されれば県北と県央をつなぐ交通事情は大きく改善する。事業化に向けた手続きが進む中、関係者の声を集めながら各案を点検してみた。

◆度々渋滞
 東彼杵道路は、長崎自動車道の東そのぎインターチェンジ(IC)からハウステンボス入口までの約15キロを地域高規格道路でつなぐ計画。同区間をつなぐ国道205号は片側1車線で代替路がなく、度々渋滞が発生しており、東彼川棚町の担当者は「国道の一部でも封鎖されると生活にも仕事にも影響する」と話す。関係自治体などは1999年から国に整備を要望。国交省は2020年、事業化の前段階となる計画段階評価手続きに着手した。
 国交省が示した案(1)は山側を迂回(うかい)する。案(2)は大村湾沿いを通る。案(3)は国道205号を4車線に拡幅する。
 県北地域の弱点は、長崎空港(大村市)までのアクセスの悪さだ。現状、佐世保市から空港までの所要時間は約70分で、九州の主要都市から近隣空港までの平均と比べて約2倍かかる。各案で整備した場合、国によると短縮効果は案(1)と(2)が高く、(3)はやや劣る。また、国道205号から東彼杵道路へのアクセスは、(1)と(2)がICに限定される。

片側1車線で佐世保市と東彼杵町を結ぶ国道205号。代替路がなく、災害時や救急搬送にも影響が出ている=佐世保市内

◆一長一短
 案ごとに見ると、(1)は東彼川棚町の中心部を避けるルートで、地域への影響が少ない。佐世保市・北松浦郡区選出の県議の一人は「地域の主な生活エリアと離れている分、(家屋などの)移転交渉が少ないのでは」と影響の少なさを評価する。デメリットは山地部の工事が多い点。地元には「少しでも早い整備を」(市議の一人)との声があり、工期も課題となりそうだ。
 案(2)は医療施設などへのアクセス性を重視し最短ルートで結ぶ。災害時のアクセス性と救急搬送の時間短縮効果が最も高い。
 国道205号では昨年8月、東彼杵町内で大雨による土砂崩れなどが発生し、最大29時間通行止めになった。ある市議は「交通事情を改善する面から、現実的だと思う」と理解を示す。市は「迂回路の確保や東そのぎICのアクセス性など、地元の要望がより反映されている」とみる。ただ、国によると工事中に騒音などの影響が出る可能性がある。
 案(3)は事業費が最も安い。一方、現道を拡幅するので、事故や災害時の迂回路になり得ない。国道沿いには家屋が立ち並び、移転交渉も多い。市議は「課題の解消効果が薄いのでは」と指摘する。

◆長崎県内観光
 県北と県央、県南を結ぶ高速交通網の長崎自動車道は佐賀県を迂回しているため、時間がかかる。交通事情の悪さが、県内観光に不利に働いている指摘があり、新幹線開業や統合型リゾート施設(IR)誘致に向けて改善を求める声が多い。国交省は地域の意見も踏まえ今後、学識経験者など第三者でつくる委員会を開き、検討を進める。
 県北地域にとって東彼杵道路の整備は20年来の悲願。次のステップである事業化に向けた手続きに、佐世保市の朝長則男市長は「大きな進展に期待を高めている」としている。


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