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観光地、倉敷美観地区の東町エリアを知っていますか。
メインエリアから少し離れているので、落ち着いた雰囲気です。
そんな東町に、蔵を改装した喫茶店があります。
地元や観光客から愛される店で、2022年4月にリニューアルオープン。
店名や提供メニューが変わった、「atelier&salon(アトリエ&サロン)はしまや」を取材しました。
リニューアルオープンした はしまや
「atelier&salonはしまや(以下、はしまや)」は「奥クラシキ」にあります。
奥クラシキは、地名では東町を指し、歴史と暮らしが調和するエリアです。
メインエリアから東町へ向かうにつれ、「ローカル感」を感じることでしょう。
東町エリア付近はメインエリアと異なり、住居もあるので、ひとびとの暮らしが垣間見えるからです。
畳、家具、カーペットなど、土産よりむしろ日常生活に必要な商品を扱う店が多いのもこのエリアの特徴かもしれません。
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はしまやに向かうとき目印となるのは、明治2年創業の「はしまや呉服店」です。
「呉服はしまや」と書かれた大きな暖簾(のれん)がかけられています。
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呉服店の脇にある細く長い路地。
こちらの道を奥へ進むと、はしまやへ。
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路地手前と奥の両方に「夢空間はしまや」と書かれた看板があります。
夢空間(サロン)はしまやは、前の店名です。
はしまやは、倉敷市指定重要文化財「楠戸(くすど)家住宅」の蔵を改装した店です。
夢空間はしまやは、楠戸家五代目と娘が営んでいました。
現在は、六代目の妻 楠戸まゆみさんが受け継ぎ、2022年4月に「atelier&salonはしまや」に。
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店名だけでなく、メニューも変わっています。
新はしまやでは、発酵食品を使用したランチやスイーツ、ドリンクを提供。
楠戸まゆみさんは倉敷美観地区内にあるバー「Salon de Ric’s(サロン・ド・リックス)」も営んでいます。
そのため新はしまやでは、オリジナルのノンアルコールのカクテル(モクテル)などを提供。
白麹甘酒のスパイス・サングリアなど、発酵食品を使用したカクテルがあります。
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席は、カウンター、長テーブル、2人または4人掛けがあるので、いろいろなシチュエーションで利用できそう。
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発酵食品入りのメニュー
はしまやのメニューは、大きくランチとスイーツの2つに分けられます。
追加料金を払うとランチセットにすることも。
- プラス300円:スイーツセット
- プラス500円:コーヒー付き
- プラス900円:ミニパフェセット
季節限定のスイーツやドリンクもあります。
筆者が気になった、3つのフードメニューを紹介しましょう。
北欧風オープンサンド スモーブロー
味噌バターと酒粕レーズンバターがじゅわっとパンに染みている一品。
味噌の塩っ気が酒粕レーズンバターの甘さを引き立てています。
スモーブローのスモーはバター、ブロはパンを意味するそうで、デンマークの伝統料理です。
食パンは天然酵母を使用しているそう。
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たっぷりの野菜とピクルスが添えられています。
野菜にかかっている白いソースは発酵豆乳マヨネーズ。
マヨネーズよりあっさりとして、フレンチドレッシングに近い味がしました。
にんじんとりんごの甘酒ドレッシングもあり、好みでサラダに付けます。
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もっとも感動したのが卵です。
見た目からはわかりにくいですが、麦塩麹漬けにされています。
塩のシンプルな味とは違い、奥深い旨みがありました。
さらに筆者の大好きな半熟状態。
毎日食べたくなるほど魅了されました。販売してほしいなぁ。
焦がし味噌の和風スパイスカレー
まさかカレーにも発酵食品を?
そうです、はしまやはカレーにも発酵食品を使用しています。
じっくり煮込まれたルーは、スパイス入りですが、焦がし味噌や麹入りでマイルドな仕上がりに。
お米は酵素玄米です。
酵素玄米とは熟成させた米で、もちもちとした食感、栄養価が高い、消化が良くなるなどの特徴があります。
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ランチには本日の塩麹スープ、白麹甘酒、麹を使った野菜の一皿が付いています。
白麹甘酒には必須アミノ酸やビタミン類が豊富で栄養価が高いうえに、身体に吸収されやすいそうです。
ノンアルコールなので、車で来たひとも安心して飲めますよ。
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塩麹のバスクチーズケーキ
バスクチーズケーキの特徴は、外側が黒く焦げているところです。
一見、失敗したように見えるケーキですが、焦げがあることで深い味わいに。
スペインのバスク地方発祥といわれています。
はしまやのバスクチーズケーキには、塩麹と国産クリームチーズを使用。
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表面が黒いにも関わらず、焦げた味がしないのは不思議です。
しっとりと濃厚な生地でした。
驚いたのは、甘さ控えめの生クリームに山椒(さんしょう)が添えられていること。
え、生クリームと合うの?って思いませんか。
山椒の独特の香りとピリリとする味は、ケーキの味を邪魔せず、むしろいいアクセントに。
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店内の販売商品
店では発酵食品を購入できます。
取材した日は、コラボレーションイベントの商品も陳列されていました。
ピクルス
はしまやの自家製ピクルス。
大きくわけて、和風、洋風、フルーツの3種類があります。
和風ピクルスの味付けは羅臼(らうす)昆布や山椒、生姜などの日本のスパイスを使用。
洋風は、カルダモン、タイム、ローリエなどのハーブが用いられています。
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洗練されたデザインなので、プレゼントすると喜ばれそうじゃないですか?
早速、筆者は県外の知人へのプレゼントに、岡山らしい「桃ピクルス」といろいろな野菜入り「和風ミックス」を買いました。
発酵調味料
味噌などの発酵調味料の販売もあります。
店で使っているものだそうです。
はしまやのメニューに欠かせない白麹も購入できます。
▼上から2段目の「ひしおの糀(はな)」で自家製ひしおが作れます。ひしおは万葉集にも登場する発酵調味料です。
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コラボレーションイベントのグッズ
リニューアルオープン後に、初めて開催したイベントのグッズが売られていました。
倉敷市茶屋町で茶道具を扱う「花結木(はなゆうき)」とのコラボレーションイベントです。
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▼八宝茶箱と名付けられた、どこでも抹茶を楽しめる茶道具セット
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はしまやではイベント期間中、八宝茶箱を用いて、オリジナル抹茶ドリンクを提供します。
イベント期間
2022年7月8月(金)~9月11日(日)
身体が喜ぶ食事を
発酵食品を使用したランチやスイーツ、ドリンクを提供する はしまや。
おいしく食べて身体のなかから健康になれるのはうれしいですね。
はしまやについて、オーナーの楠戸まゆみ(くすど まゆみ)さんと、店長の山本亜砂美(やまもと あさみ)さんに話を聞きました。
オーナーの楠戸まゆみさんと店長の山本亜砂美さんへインタビュー
2022年4月にオーナー、店名、提供メニューが変わったはしまや。
オーナーの楠戸まゆみさんと店長の山本亜砂美さんに、新しいはしまやについて話を聞きました。
スタッフについて
──オーナーは楠戸まゆみさんで山本さんは店長なんですよね?
山本(敬称略)──
はい、楠戸ははしまやと美観地区にあるバー、サロン・ド・リックスの運営を。
私は、前身の夢空間はしまやの頃からこちらで働いています。
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改装は最小限に
──店名を変えるときに、店内の改装はしましたか?
山本──
改装したのは裏のキッチンです。
もともとギャラリーでしたが、ピクルス作りや調理をするスペースに。
喫茶店のほうは照明とサイドのテーブルは変えました。
真ん中のメインテーブルはそのまま使用しています。
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喫茶店は、家具などの配置換え程度に留めました。
あまり変えたくない想いがあったので。
蔵の良さを残したかったので、ほとんど手を入れていません。
変える計画はあったんですけど。この空間がいいですよね。
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登録有形文化財に指定された、歴史ある建物の「良いもの」を大切にしたいですね。
ここには蔵があって、呉服屋の本家にはかまどが残っています。
昔の生活の一部だった蔵やかまどといった「良いもの」を残していきたいです。
──店名に「アトリエ」をつけた理由は?
楠戸(敬称略)──
当店の漬物蔵で発酵調味料を醸し、さまざまな季節の味わいを日々お作りしています。
発酵調味料であるお酢、米酢を使用したピクルスの製造販売をとおして、「新たな味わいを生み出していく」意味でatelierをお店の屋号にいれました。
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メニューについて
──なぜピクルスを提供しているのですか?
山本──
バーのときから、お酒のアテとして提供していました。
その延長で、当店ではメインとしてお出ししています。
ピクルスと発酵食品の提供は、楠戸がしたかったことのひとつです。
楠戸──
ここには「漬物蔵」という蔵があります。
しばらく眠ったままになっていましたが、今回の改装の目的の一つが漬物蔵を整えること。
昔からピクルスが好きだったこともありますが、「保存できる野菜の瓶」を現代的につくりたいと思ったのはこの漬物蔵の存在から。
健康的だけど取り入れにくいお酢をおいしく活用できるし、晴れの国の力を蓄えたお野菜たちをヘルシーで元気がでるような風味を目指してお作りしています。
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私が手土産を持って行きたい際に、お菓子以外を持って行きたいのに、あまりなくて。きっと私のようにお菓子以外の手土産を求めているかたがいると思ったことも、ピクルスを提供したきっかけのひとつです。
お菓子ではないお持たせ、としてプレゼントにも選んでいただきたいです。
山本──
フルーツ液で作ったものは飲む酢のように、飲みものとして楽しんでいただきたいです。食べてもいいですよ。
野菜はおつまみでも、カレーに添えても。
みじん切りにしてマヨネーズと和えてタルタルソースのようにするのもおすすめです。
購入されたかたには、ピクルスの活用法の紙をお渡しいたします。
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旬のものでは桃のピクルスがあります。
桃はそのまま食べて、液は炭酸で割って飲んでいただければと。
豆やゴボウなど珍しいピクルスも作っています。
玉ねぎやトレビスなど野菜をミックスしたものもあります。
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ピクルス液にはスパイスを入れています。
スパイスやハーブを入れると、味や香りがより良くなるんです。
ピクルスは店のフードメニューに添えて提供しています。
──料理に使っている発酵食品は、店で作っているのですか。
山本──
発酵することを「醸す(かもす)」といって、当店では麹と食材を合わせて醸しています。
醸しているのは、塩麹、麦麴や玉ねぎ麹、トマト麹、マッシュルーム麹などです。
麹は、料理によって使い分けています。
たとえばカレーにも麹が入っています。さらに味噌やスパイス、ピクルス液も。
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店の売りは白麹を使った白麹甘酒で、これも手作りです。
飲んだかたから「酸味があって、甘すぎない」と好評をいただいています。
一般の甘酒との違いや白麹そのものを知っていただきたいですね。
飲みやすくて、飲む点滴といわれるくらい身体にいいもの。
身体のなかから健康になってほしいですね。当店ではさまざまなドリンクに使用しています。
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料理に添えている卵は塩麹か麦麹に漬けて寝かしています。
そうすると塩みが入って、きりっとした味に。
塩より麹に漬けるほうが身体にもいいです。
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とくにコロナ禍においては免疫力を高めるのが大事ですよね。
発酵食品が免疫力アップの役割をしてくれていると思います。
──スモーブローを提供しようと思ったのは?
山本──
野菜をいっぱい摂って、ピクルスも食べていただくには、どういう形がいいかなと考えました。
サンドイッチだと中身が見えなくなってしまうじゃないですか。
オープンサンドにしたら見た目も華やかで、好きな食べかたができるんですよね。
具を挟んでもいいし、載せて食べてもいいですし、別で食べても。
好きにアレンジをしていただけるかなと思ってスモーブローにしました。
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バナナのスモーブローに使っている、レーズンバターのバターはみりんで甘みをつけています。
バナナも炒めてバターと絡めて甘くなるように。
レーズンバター、生クリーム、バナナ、シナモンの味がぴったり合うメニューです。
店のこれから
──今後やりたいことはありますか。
楠戸──
私たちが「発酵」ということの先には、古き良きものの価値をみなさまとご一緒に楽しんで参りたいという想いがあります。
この奥クラシキの情緒感にこころ調う時間に繋がりますように、おもてなしさせていただきたいです。
秋には「はしまや展」数年ぶりの楠戸家住宅一般開放、珍しい白麹と黒麹を贅沢に使用した「白黒麹茶会」を企画中で、毎年開催していきたいと考えています。
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山本──
インターネットでピクルスなどの販売をしたいですね。
ピクルスは常温で大丈夫ですので。
甘酒も扱いたいですが、要冷蔵なので販売できるか研究中です。
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以前の店(夢空間はしまや)では、この空間を気に入っていただいたかたがジャズなどのイベントをされていました。
そういったイベントをまたしたいですね。
2階席を使用してワークショップもしたいと思っています。
他にも、さまざまなやりたいことがあって、計画中です。
おわりに
落ち着いた雰囲気の東町にある、はしまや。
前の夢空間はしまやとは、メニューやコンセプトが変わったものの、蔵の良さはそのまま残っています。
身体に良く、味に深みを持たせる発酵食品をたっぷりと使用した料理を、倉敷の歴史を感じる建物で食べられるのは贅沢(ぜいたく)ですね。
料理に添えられる自家製ピクルスが気に入ったら、自宅用またはプレゼントに購入しても。
イベントも計画中で、今後のはしまやから目が離せませんね。