定着した「8月盆」

 長崎のお盆のにぎやかさは格別。墓地では矢火矢が飛び交い、子どもたちが色とりどりの花火を楽しむ。爆竹のごう音が鳴り響く精霊流しの喧噪(けんそう)は言うまでもない。歴史的に長崎と縁が深い中国の風習の影響だ▲本来、お盆は旧暦7月13日から15日で、新暦(太陽暦)では8月に当たる。日本で新暦が採用された1873(明治6)年以降、全国では「8月盆」が主流になったが、長崎市では明治後期から非常時を除き「7月盆」が続いていた▲現在と同じ8月盆になったのは意外に新しく、ちょうど70年前の1952(昭和27)年から。市、商工会議所、仏教連盟などでつくる協議会が、この年から8月13~15日にすると決めた▲8月は天候が良い、夏休みの子どもが行事に参加できる、全国的に8月盆が多いため県外の親族が帰省しやすい-などの理由で、8月盆への変更を求める市民の声が高まっていた▲現在でも東京や神奈川、石川、静岡の一部には7月盆の地域が残るそうだ。だが、長崎のにぎやかな盂蘭盆会(うらぼんえ)には、やはり夏真っ盛りの8月が似合うだろう▲明日は精霊流し。昨年9月、99歳で亡くなった長崎の郷土史家・越中哲也さんも初盆を迎えた。テレビの名解説で人気を集めた「越中先生」。とうとう船に乗って十万億土に行ってしまわれる。(潤)

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