WRC新王者誕生の可能性も。選手権首位トヨタ、フルターマックのイープル・ラリーで今季6勝目を狙う

 トヨタGRヤリス・ラリー1でWRC世界ラリー選手権に参戦しているTOYOTA GAZOO Racing WRTは、8月19日から21日にかけて、ベルギーのイープルを中心に開催される2022年シーズン第9戦『イープル・ラリー・ベルギー』で今季6勝目と同イベント初優勝を目指す。

 イープル・ラリーに出場するクルーは、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組、エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム組と、TOYOTA GAZOO Racing WRTネクストジェネレーションから参戦する勝田貴元/アーロン・ジョンストン組だ。

 前戦ラリー・フィンランドからわずか1週間の短いインターバルを経て、ベルギーで行われる第9戦は、すべてのステージが舗装路で争われるフルターマック・イベントだ。同様のラリーは今季のWRCでは第3戦クロアチア以来、2戦目となる。

 非常にトリッキーなラリーとして知られるイープル・ラリーは、2021年に初めてWRCのカレンダーに組み込まれた。西フランダース地方のイープルを中心に展開されるステージは農業道路が多く、直線的でハイスピードなセクションをジャンクション(曲がり角)で結ぶようなレイアウトが特徴だ。

 ステージの道幅は全体的に狭く、脇には大きな排水溝があり、バンピーな路面も多い。また、ジャンクションには大きくインカットできる箇所が多くあり、路肩や畑の土や砂利がラリーカーの走行によって掻き出されることで、路面は非常に滑りやすくなる。

■ロバンペラがシリーズチャンピオンを決める可能性あり

 そんな今戦では、今季5勝をマークしているロバンペラが自身初のドライバーズタイトルを獲得する可能性がある。母国フィンランドで総合2位を獲得した彼は現在、ドライバー選手権を独走中。前戦のウイナーでランキング2位に浮上したオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)に対するリードを94ポイントに拡げている

 今回、ロバンペラがイープル・ラリーで優勝したうえでパワーステージでボーナスポイントを獲得し、タナクや彼と1ポイント差のランキング3位につけているティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)がポイントを獲得できなかった場合、21歳のフィンランド人ドライバーがシーズン残り4戦を残してドライバーズチャンピオンを決めることになる。実現すれば史上最年少でのタイトル獲得だ。

■ラトバラ「今年はより良い準備ができたと思う」

 なお、ロバンペラは昨年、初出場したこのラリーで総合3位表彰台を獲得した。同じく初出場だったエバンスは、チームメイトに次ぐ総合4位を記録している。

 一方、地元フィンランドで印象的な表彰台獲得劇を演じ総合3位となったラッピは、2014年のイープルにS2000車両で出場した経験があるものの、WRCトップカテゴリーのマシンでの参戦は今年が初となる。昨年、キートン・ウイリアムズとペアを組んで初出場した勝田は、デイ2でクラッシュを喫しリタイアとなった。

「イープルはとても難しく、ハイスピードなアスファルトラリーだ」と語るのは、TOYOTA GAZOO Racing WRTのヤリ-マティ・ラトバラ代表。

「ハードブレーキングやインカットをするところが多く、舗装路面への土の流入もありる。雨が降ると非常に滑りやすくなり、ドライバーはつねに路面を読み、グリップの変化を判断する必要があるんだ」

「昨年出場したことによって得た経験に基づき、今年はより良い準備ができたと思う。ラリーの特徴を理解し、より適した道でテストを行なうことができた。だから、昨年以上に競争力が高まり、充分に優勝を狙えると思っている」

 2021年は最終日のステージの一部がスパ・フランコルシャン・サーキットで開催されたイープル・ラリー・ベルギーだが、今年は全ステージがサービスパークが置かれるイープルから半径30km以内に収まるなど、非常にコンパクトな構成となっている。

 イベントは木曜夕方のシェイクダウンを皮切りに翌19日金曜から競技がスタート。デイ1は4本のステージで計8SSを戦う。デイ2も同様のかたちで進められSS9~16が行われる。最終日の21日日曜は2本の各2回走行。最終SS20は、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーにボーナスポイントが与えられる“パワーステージ”となっている。全部で20本となるSSの合計計距離は281.58km、リエゾン(移動区間)を含めた総走行距離は687.24kmだ。

イープル・ラリーは伝統的なイベントであるがWRCの大会として開催されたのは2021年が初。今年は開催2年目となる

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