<社説>敗戦77年 平和国家の意思を示そう

 核使用の恐怖が現実味を帯びる中、アジア・太平洋戦争の敗戦から77年を迎えた。国民には、かつてないほど戦争への危機感が高まる。先の大戦の反省から、戦後の日本は紛争解決の手段として武力を認めない憲法9条を掲げる。「紛争なき世界」の実現を強く願う平和国家としての意思を改めて発信する日としたい。 ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領は2月、核戦力行使の可能性を示唆した。田上富久長崎市長が平和祈念式典で述べたように「誤った判断や機械の誤作動で核兵器が使われるリスクに直面している現実」を突き付けた。

 2日にはペロシ米下院議長が訪台した。反発する中国は台湾近海で大規模軍事演習を行い、弾道ミサイルが日本の排他的経済水域に落下した。県内漁業者に影響があった。

 ロシア、中国の武力を背景にした行動には断固として抗議する。日本世論調査会が実施した全国調査で「日本が今後、戦争をする可能性がある」と48%もの人が懸念を示したのは、こうした隣国への不信感が根底にあるからだ。

 同時に戦争が起きる可能性として50%が「他国同士の戦争に巻き込まれる」を挙げた。安倍政権時代に成立した安全保障関連法によって、憲法違反の集団的自衛権行使に道を開いたためだ。

 東アジアの安全保障情勢は混迷を極める。だからこそ対話や外交による解決の道を探るのが平和国家としての日本の役割であるはずだ。

 だが国内の状況は全く逆の道に進もうとしている。

 中台に最も近い南西諸島に自衛隊のミサイル基地配備が続く。安倍晋三元首相が提起した防衛費増額論を継ぐように、岸田文雄首相も改造内閣発足に当たって「必要となる防衛力の検討、予算規模の把握、財源の確保を一体的かつ強力に進める」と明言した。

 武力に対し、武力で対抗する軍拡競争を続ければ、いずれ破滅をもたらすだろう。

 旧大蔵省がまとめた「昭和財政史」によると、1931年の満州事変当時、国家予算に占める軍事費は約3割だったが、太平洋戦争末期の44年は85.5%に上った。財政史は「軍拡は必然的に戦争への道を促し、戦争はまたさらに次のより大きな戦争を不可避にする」と教訓を残している。

 無謀な戦争に突入し、77年前、沖縄は戦場にされた。今、対中抑止を名目に南西諸島で自衛隊基地を増強し、必要かどうか分からない装備品を購入するために防衛費を増やして隣国との摩擦を増やすのなら、同じ過ちを繰り返す。

 しかも現政権は2023年度予算要求の省内調整に、制服組自衛官を中心とする統合幕僚監部を査定側に加えた。政治による文民統制が骨抜きにならないか注視が必要だ。

 現在の日本に求められているのは9条の理念を軸にした平和外交へ積極的に行動することである。「軍備増強」などの空文句はいらない。

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