日経平均2万8500円超えで好調も…上場来安値を更新した銘柄とは

先週の日経平均株価は、前週末に比べ371円高の28,546円で引けました。終値で28,500円超えは、今年1月12日(水)以来となります。


日経平均、好調の背景

週前半は8月5日(金)に公表された、米国の雇用統計で非農業雇用者数が、事前予想の2倍程度の前月比プラス52万8,000人となった事や、7月の失業率が3.5%と新型コロナウイルス前の水準まで低下した事で、9月のFOMCで再度、大幅な金利の引き上げが行われるのではないかとの思惑が広がりました。また、8月8日(月)の引け後に発表された東京エレクトロン(8035)とソフトバンクG(9984)の決算が予想を下回った事などから軟調な展開となっていました。

しかし8月10日(水)に発表された、7月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前年同月比8.5%上昇と市場予想の8.7%を下回った事で、過去2年間にわたってインフレ高進が続いていただけに、安堵すべき顕著な兆しと捉えられ、米国株が大幅上昇し、日経平均株価も8月12日は700円を超える上昇となりました。7月のCPIの低下はガソリン価格が約20%下落した事が大きかったです。

このような状況の中で、上場来安値を更新した銘柄があります。日経ダブルインバースETF(1357)です。

日経ダブルインバースETFとは

ETFとは、日経平均やNYダウなど特定の指数に連動した成果をめざし運用設定されている、金融商品取引所に上場している投資信託です。

日経ダブルインバースETFが連動するのは「日経平均ダブルインバース・インデックス」で、日々の騰落率を日経平均株価の騰落率のマイナス2倍として計算される株価指数です。例えば、日経平均株価が前日に比べて1%上昇すると、日経平均ダブルインバース・インデックスは2%下落し、反対に日経平均株価が前日に比べて1%下落すると、同指数は2%上昇する仕組みです。

日経平均225先物取引を主要投資対象としており、当該取引の売建て総額が純資産総額に対して約2倍程度になるように調整を行います。日経平均株価の下落を見込む投資家に人気の商品です。

しかし、この商品の仕組みを理解せずに、取引している投資家の方も多いのではないでしょうか。2021年6月に金融庁はレバレッジ型・インバース型 ETF等への投資にあたって注意を促しました。

・レバレッジ型・インバース型ETF等は、主に短期売買により利益を得ることを目的とした商品です

・投資経験があまりない個人投資家の方が資産形成のためにこうしたETF等を投資対象とする際には、取引の仕組みや内容を十分理解し、取引に伴うリスク・コストを十分に認識することが重要です

なぜ上場来安値を更新したのか

先週末に上場来安値を更新した、日経ダブルインバースの信用買い残高は過去最大の1億6,000万口まで拡大しています。信用倍率も27.65倍と買い残高が売り残高に比べ膨らんでいます。日経ダブルインバースを買う=日経先物を売るという取引です。日経ダブルインバースの残高が膨らむという事は、日経先物の売り残が増加している事になります。その商品が上場来安値を更新し、反対売買する投資家が増えた場合、日経ダブルインバースを売る=日経先物を買う取引となり、日経平均株価を押し上げる要因になります。毎週第2営業日に公表される信用取引残高を注意深く見る事をお勧めします。

また、金融庁が促している通り、インバース、レバレッジ型ETFは短期売買によって利益を得る商品です。理由としては、値動きを日次(1日)で達成するように運用されており、 2日以上の運用期間で見た場合、指数・指標の価格のレバレッジ倍率にならない可能性があります。

例を挙げると2021年9月14日(火)に日経ダブルインバースの株価は356円の上場来安値をつけました。当時の日経平均株価は30795円です。対して、先週月曜日に同じく356円をつけた時の日経平均は28,200円でした。日経平均株価は約2,600円の下落をしているにも関わらず、同商品は上昇していない事がわかります。

レバレッジ型、インバース型の商品はいくつか存在しますが、全て同じです。短期売買を行うときに活用するようにしましょう。

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