診療体制を試行錯誤 舟入市民病院の2年半 今後の医療体制確立に向けて…

広島県は、新型コロナ感染のピークを8月の中旬から下旬と見込んでいます。軽症の患者が多いということですが、県は12日に「医療非常事態警報」を出していて、医療現場のひっ迫がさらに懸念されます。2年半前から最前線で新型コロナの治療などにあたってきた「拠点病院」の今です。

【写真を見る】診療体制を試行錯誤 舟入市民病院の2年半 今後の医療体制確立に向けて…

広島県の感染症医療の拠点病院・舟入市民病院です。県内で最初の新型コロナ患者を受け入れてからおよそ2年半の間に1800人余りの新型コロナ患者を受け入れてきましたが、診療にあたる態勢は、その都度、変えてきました。

舟入市民病院 高蓋 寿朗 院長
「どこから見てもらってもわかるけれど、あそこのついたての向こうはレッドゾーン(コロナ病棟)になるんですね。上をむしろ開けているような状態で」

当初は、コロナ病棟は1つのフロアを独占するような配置にしていましたが、5月から1つのフロアを2つに分け、一般の病棟と共存させる形に変えました。

高蓋 寿朗 院長
― ここは一般の?
「そうです。一般患者さんに入っていて、今はちょっと人数を減らしているよね。10数人のところを10人程度に」

小林康秀キャスター
「コロナ病床のナースステーションです。看護師さんたちの詰め所ということになります。あちらにパーティションがありますが、あのパーティションより向こう側が、コロナ病床ということになります。そして、こちら側が、ふつうの状態でだいじょうぶ、防護服は必要ないということになります」

完全な隔離ではなく、パーティションだけで隔てる形に変えても、今のところ、院内の感染拡大には及んでいないということです。

一方、変わらず厳格に続けているのは、レッドゾーンへの出入りの際に気を付けていることです。

高蓋 寿朗 院長
「一番気をつけているのは、(レッドゾーンの)入り口で着替え・準備。こちら側にいるときときは、ふつうの格好をしているんです」

小林康秀キャスター
「みなさん、手際よく着て、中に入られます。鏡で自分の状況を確認しながら、手袋・フェイスシールドを着用しました。そしてレッドゾーンに入っていきます」

レッドゾーンから出るときは、グレーゾーンと呼ばれる、その中間の部屋で防護服を脱ぐなどします。

高蓋 寿朗 院長
「業務が終わった人が、グレーゾーンに戻ってきました。ここで着ていた防護服などを脱いで、またクリーンゾーンに戻ってくるということになります。手洗い消毒は気をつけてやるようにしているんです」

20床ほどのコロナ病床は、このところ、常時、18床前後埋まっているといいます。

デルタ株などの時期に比べ、酸素が必要なほど症状が重い患者の割合は減っているといいます。しかし、病棟内の現場のリスクは高く、気は抜けません。

森 麻美 総看護師長
「もう、これだけはやってしまうと、いつかかっても、どこでかかってもおかしくないという状況ですので、少しでもカゼ症状があれば、熱がなくても出勤せずに所属長に報告して、指示を仰ぐっていうことを徹底しています」

この春からは発熱外来のあり方も緩和しました。以前は発熱外来と一般の外来のフロアを完全に分けていましたが、今は同じフロア内をパーティションで区切って、ゾーニングしています。

高蓋 寿朗 院長
「陽性の患者さんはCTに行くとき、ここを通るので、そのときは必ず看護師がこの辺に待機して、守衛さんが閉めて、(一般の人が)通れないようにして患者さんを誘導して、一般の人に配慮する」

高蓋院長は、変更後、この場でうつった人はいないので、リスクは基本的に少ないと思うとしています。

今、新型コロナは、感染法上で「2類相当」に分類されていますが、今後、季節性インフルエンザ並みの「5類相当」に引き下げることが検討されます。

そうなると、一般の病院でもコロナ患者の診療などにあたることになります。今、舟入市民病院では、ほかの病院などから視察が相次いでいるといいます。

高蓋 寿朗 院長
「実際、こうやって2年間、ぼくらも試行錯誤しながらやってきて、ここまで緩めてもだいじょうぶであるとか、ここはきちんとやらないといけないとか、両方混ぜ合わせて一番いいところを今、探し、ぼくらも探している状況」

高蓋院長は今、病院で行っている工夫をほかの病院にも提示して、これからのコロナ対応に生かしてほしいと考えています。

高蓋 寿朗 院長
「ちょっとスペースがあるとか、(建物の)造りでも特別な部分は舟入市民病院の場合はあるわけですけども、いろんな病院で工夫してやっていけば、多くの病院でコロナ対応していけるのではないかと思う」

― パーティションだけでだいじょうぶなのかという点についてです。以前はビニールカーテンなどでしゃへいしていましたが、院内の換気システムがうまく働かないことがわかり、パーティションにしたということです。こういうノウハウをほかの病院にも提供することによって、コロナ医療の次の段階に対応していければということで、病院も今回、取材に応じてくれました。

― あらためてお伝えしますが、広島県は「医療非常事態警報」を出していて、陰性確認目的で医療機関を受診することや軽症の場合、救急車の利用は控えてほしいと呼びかけています。

© 株式会社中国放送