CFDはインフレ対策に有効なのか?積立投資家も知っておきたい仕組みやリスクを解説

2022年に入り、アメリカの利上げやロシアのウクライナ侵攻により、世界中でインフレ(物価上昇)が加速しました。一口にインフレといっても様々なパターンがあり、どのタイプのインフレにおいてもすべてに対応できる資産防衛策というのは、現時点では残念ながら存在しません。

今回のインフレは各局面においては、ドル円などの為替、原油や天然ガスなどの資源を直接的に売買したかった、わかりやい動きをしていたという感想も少なからずあったかもしれません。このような環境下で、積立てを中心とする投資家が活用しやすいインフレ対策として、CFD(差金決済取引)を解説します。


複雑な現在のインフレ局面

インフレには2種類あり、それが起こるメカニズムはいたってシンプルです。

1つは「ディマンドプルインフレ」(需要過多)です。旺盛な需要の伸びに対して、生産者などの供給力の伸びが追いつかない時に起こります。2つ目が「コストプッシュインフレ」(供給過少)です。資源高、人手不足による賃金上昇などのコスト増、流通網や生産能力の崩壊などで起こります。

つまりインフレは、需要(買い手のニーズ)と供給(売り手の生産力)のバランスが崩れてしまうために起こるのです。インフレにより物価が上昇することで、モノの価値が上がりお金の価値が下がり、株価や為替など経済へもさまざまな影響を与えます。

コロナショックでは、世界中での経済活動の制限、給付金支給、株価急回復、巣ごもり需要の増加などにより、グローバルにインフレが進行、さらにそこに追い打ちをかけるかのようにウクライナ侵攻です。アメリカなどの利上げ加速懸念をさらに高め、2022年前半は世界的に株価が軟調となりました。

先物とCFDとの違い

金融商品には様々な商品や取引形態があります。株式・債券・為替・投資信託(投信)・商品(コモディティ)など、「現物」と呼ばれる一般的な金融商品(原資産)の、ヘッジ目的として作られたのが金融派生商品(デリバティブ)と呼ばれるものです。

デリバティブは現物を直接売買するものではなく、一定の現金(証拠金)を担保として差し入れることで、その証拠金の数倍から10倍以上の金額での取引(証拠金取引)が可能になります。現物取引とは異なり、売買代金そのものを受け渡し(決済)することなく、売買から得られた損益の差額だけを決済(差金決済)します。有名なものでは、株価指数先物、FX(外国為替)などがあります。

その連動する原資産が将来上がると思えば安く買って高く売り、下がると思えば高く売っておいてから安く買い戻す、という価格差だけを狙う取引が可能になります。また同じデリバティブにおいても、先物とCFDでは少し特徴が異なります。

・先物取引
満期(期日)時の価格を予測する売買であり、満期前でも価格を予測しながら売買できます。日本国内では、日経平均先物がメジャーです。一般的には取引手数料がかかり、売買に必要な証拠金が比較的大きくなっています。

・CFD取引
「Contract For Difference」の略で、日本語では差金決済取引と訳します。満期はありませんが、将来の価格を予測し価格差だけを狙う売買という点では先物と同様で、FXもCFDの一種と捉えることもできます。一般的には取引手数料が無料で、売買に必要な証拠金が比較的小さくなっています。

CFDのメリット

・レバレッジ取引
CFDの種類ごとに、証拠金に対して一定倍率までの資金で売買ができます。小さい力で大きいモノを動かす「てこの原理」に例えられることから「レバレッジ」と呼ばれ、住宅ローンや事業融資などの借入金もこれにあたります。レバレッジ取引を行うことで、手元資金よりも多くの資金を運用できるため、投資効率をあげることができます。

・価格の上下ともに利益を狙える
現物取引ではまず商品を買うところから取引を始めなければいけません。しかし、CFDは買って売るだけではなく、先に売っておいて後から買い戻すことも可能です。つまり、上昇局面だけではなく下落局面でも利益を狙えます。

・豊富な商品性
CFDの種類には豊富なラインアップがそろっています。日経平均株価などの株価指数、金や原油などのコモディティ、個別のメジャーな米国株式など、CFDを通じて売買することができます。取引における価格は、原資産となる金融商品をベースに決まるため、原資産の現物とほぼ同じ価格で取引ができ、原資産と価格が大きくかい離しにくくなっています。

なお原資産に配当がある場合、買いポジションなら配当分を受け取れますが、売りポジションなら配当分を支払います。

・グローバルに取引
各種取引をほぼ24時間売買することができます。マーケットが開いている時間に張り付く必要がなく、好きな時間に取引できるので、日中に時間が取りにくい方も取り組みやすいです。

CFDのデメリット

・強制決済や追証のリスク
メリットの裏返しでもありますが、レバレッジをかけた取引が可能なため、その分大きな損失を出さないように、適度なポジション管理が必須です。そのため、各社独自の運用ルールのもと、含み損(まだ実現していない損失)が一定水準を超えると、強制的に決済されたり、追加証拠金(追証)を差し入れなければいけなくなることもあります。

・売り買いの値段にスプレッドがある
売りと買いの価格差(スプレッド)が開いている状態で売買するため、買う時は少し高めの価格で、売る時は少し安めの価格になり、その分は不利になります。外貨預金における、日本円から外貨を買う、外貨を売って日本円を買う時と同様、実質的には売買手数料のような意味合いになります。

メジャーになりつつあるCFD

近年、各国の株価やドル円などの為替レート以外にも、原油・金・銅・木材・天然ガス・小麦・コーン・大豆など、多くのデリバティブ商品が話題となることが増えました。特に筆者が印象的だったのは、コロナショック直後に、WTI原油の先物価格が一時マイナス40ドルを超えたことです。まさか原油先物が大きくマイナスになるとは想像すらしておらず、買い方にとってはチャンスでもありました。

積立投資家の中でも、初めてこのような金融商品を売買してみたというかたは少なくないかもしれません。特に足元では、国際分散投資にCFDやFXを活用しただけで、パフォーマンスが大きく向上する展開でした。

CFDはレバレッジをかけた短期取引だけでなく、数ヵ月から数年のトレンドのなかで利益の拡大を狙えることもあります。場合によっては長期保有による投資法としても有効でしょう。

仕事で忙しい方などは頻繁に売買する必要もなく、国際情勢を踏まえ、より大局的な資産運用をしていくことも可能な時代です。実際に少額で新しいことにチャレンジしてみる、というのも良い経験になるでしょう。

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