一度だけ負けて

 1点を追う七回裏の守りは2死満塁。やや高めに浮いた3球目のストレートを相手チームの「エースで4番」は逃さなかった。大きな当たりが外野手の頭上を越え、そのままスタンドで弾む。スコアボードに重い重い「4」が灯った▲夏の全国高校野球、本県代表の海星高は昨日、3回戦で滋賀県代表の近江高と対戦。「サッシー」こと酒井圭一さんや、現在はプロ野球阪神の2軍監督を務める平田勝男さんらを擁してベスト4まで勝ち残った1976年以来の夏3勝に挑んだ▲相手の近江高は昨夏ベスト4、春のセンバツでは新型コロナ感染で出場を辞退した学校の代役で急きょ登場し、決勝まで勝ち上がった強豪だ。そのときの初戦の相手は本県の長崎日大高。何だかちょっとした因縁も感じつつ▲大会屈指の好投手を向こうに回しても、海星打線の積極的な攻撃は変わらなかった。満塁本塁打などで5点を失い、大勢が決したかに見えた八回、九回の攻撃でも粘り強く好機をつくった▲地方大会を含めた今年の出場チーム数は全国で3549。最後まで勝ち続ける優勝校以外は、どんなチームもどこかで一度だけ負けて夏が終わる▲甲子園で2度目のナイター。大事な仲間と、1分でも1秒でも長く、この場所で野球を-。そんな気持ちが伝わる好試合だった。(智)

© 株式会社長崎新聞社