「なぜ『カメ』は歩くのが遅いの?」 “ある力”と引き換えに失った俊敏性 「骨格は常識覆す」と飼育員

カメの甲羅ってどうなってるの? なぜ歩くのが遅いの?

夏休みのレジャー施設で、小さい子どもにペンギンと並ぶほど人気があるのが「カメ」なのだそう。世界各地で長寿の象徴とされ、日本では縁起の良い生きものとしても知られます。ペットにする人も多く、ポケモンのゼニガメやドラゴンボールの亀仙人など、キャラクターのモチーフとしても愛される身近な存在です。

そんなカメの意外と知らない生態について、3種類の陸棲のカメを展示している農業公園「淡路ファームパーク イングランドの丘」(南あわじ市)の飼育員・後藤敦さんに聞きました。

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イングランドの丘では、「生き物の『なぜ?』に飼育員が答えます!」と打ち出した「質問回収ポスト」を設置しています。来園した子どもたちが、動物の素朴な疑問を飼育員に聞くことができます。ポストに寄せられるカメに関する質問の中でも多いのは、カメの一番の特徴である「甲羅」に関する内容だそうです。

――とにかく硬くて頑丈な甲羅。何でできていて、どのような仕組みになっているのでしょうか。

【後藤さん】 カメの甲羅は主に「骨」と「うろこ」でできています。甲羅には、背中側の甲羅(背甲)と腹側の甲羅(腹甲)があります。

まず背甲について説明すると、甲羅のいちばん内側は、背骨と、幅広く変化した肋骨(あばら骨)がくっついて作られたフレームの上を、骨から成る板が覆っています。その上に、うろこ由来の角質でできた板が重なって形成されています。

さらに、骨から成る板の層と角質でできた板の層は、レンガ造りの壁のように継ぎ目をずらして組まれていることで強度を上げています。

私たち人間の体は、肋骨が心臓や肺を囲むように守ってくれていて、その肋骨の外側に肩甲骨があります。この構造は他の動物も同じですが、カメは肋骨が甲羅となっているため、肋骨の内側に肩甲骨があります。自分の肋骨の内側に全身を納めて守ることができるように進化したのです。

全ての種でこのような構造になっているわけではありませんが、背骨を持っている“脊椎動物”の中で、肋骨と肩甲骨の位置が逆なのは、カメだけ。カメの骨格は、常識を覆す型破りな構造になっているのです。

――カメのもうひとつの特徴といえば、歩くのが遅いこと。昔話の「ウサギとカメ」でも、足の速いウサギと足の遅いカメが描かれています。カメは、なぜ歩くのが遅いのでしょう?

【後藤さん】 カメは頑丈な甲羅を獲得し、防御力を格段に上げました。その結果、甲羅の構造と重さ故に機敏性を失いました。

先ほど説明した通り、陸上で生活する四つ足や翼を持つ脊椎動物の肩甲骨は、肋骨の外側にあるのが常識です。しかしカメは、前足を甲羅の内側に収容するために、肩甲骨が肋骨の内側にあります。その体の構造の都合により、足が横に張りだすような歩き方になることから、速く歩くことができないのです。

そんなカメですが、逃げるときや怒ったときなど本気を出した際には、けっこう俊敏に動くこともあるんですよ。

身近な爬虫(はちゅう)類でありながら、まだまだ知らないことだらけのカメたち。イングランドの丘では、150年以上生きるといわれている世界最大級の陸生のカメ「アルダブラゾウガメ」や、甲羅に豹柄のような模様がある「ヒョウモンガメ」、世界で3番目に大きなリクガメの仲間「ケヅメリクガメ」の3種類の陸棲のカメを、大温室で展示しています。ご来園の際はぜひ観察してみてください。新たな発見があるかもしれませんよ。

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