相次ぐ「新型コロナ感染者の救急受入拒否」神奈川ではまた死亡例

 新型コロナウイルス「第7波」が引き続く中、感染者の救急搬送を要請しても受け入れ先の決定に時間がかかるか、決まらず救急隊が撤退する事例が全国で相次いでいる。病床使用率がひっ迫している大都市圏では、救急隊が撤退した後死亡するなど「見殺し」と言われても仕方のないケースも発生している。

感染者の「救急搬送困難事例」過去最多を連続更新

 総務省消防庁によると、感染者と分かっている患者の受け入れについて4回以上問い合わせ、搬送開始まで30分以上かかった「救急搬送困難事案」は8月1-7日までの1週間、県庁所在地などの主要な消防署52ヵ所の集計だけでも2873件あり、3週連続で過去最多を更新した。なお困難事例全体は6589件となっており、実に全体の4割強を占めている。

 受け入れを困難にさせているのが感染そのものの爆発だ。流行が極大化し、様々な基礎疾患を持つ人、または怪我を負った人が同時に新型コロナにも感染している。複数の治療対応を求められるとなると医療機関が能力を持ち合わせておらず、受け入れを断るケースが続発しているのだ。

 また沖縄県以外にも感染者の多い大都市圏では病床使用率がひっ迫しており、病床自体にほとんど余力がなくなっている。特に東京都、神奈川では、15日時点で病床使用率が90%を突破しており、あと数日で満床になる可能性が強い。

入院できずに亡くなる自宅療養者、首都圏で相次ぐ

 こうした厳しい現実が徐々に、治療の機会すら与えられず死亡する事例を発生させつつある。東京都によると、新型コロナに感染し入院調整中に亡くなった自宅療養者は7月以降、8月12日時点で3人。いずれも基礎疾患がある高齢者だった。

 神奈川県では、9日に新型コロナへの感染が確認された90代の女性が、診察した医師の判断により救急搬送を要請されたものの受け入れ先が見つからず、翌日死亡した。女性は循環器などに複数の基礎疾患を持っており、今月はじめから訪問診療を受け、点滴などの治療を受けていたという。

 15日の全国での感染者は過去最多ではなかったものの13万8613人となっており、高いレベルを継続している。ピークアウトを迎えたとは到底考えられず、受けるべき医療が受けられない厳しい事態が今後も続くことは必至の情勢だ。

[2022年8月16日20時30分追記]
 神奈川県の黒岩知事は、90代の女性が救急搬送先が見つからず今月10日に自宅で死亡したと発表したことについて、16日夕方の会見で事実誤認だったとして謝罪、訂正した。実際は救急搬送されておらず、病院で診察を受け入院の必要はないと判断され自宅に戻っていたという。黒岩知事は「現場が混乱していて情報を精査できていなかった」と陳謝した。

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