精神障害に関する労災件数は増加~令和3年度「過労死等の労災補償状況」~

過労死とは、過剰な労働によってかかる心身の負担が原因で死亡または自殺することを指します。
健康的に働いていたら本来は起きるはずがなかった悲しい事象であり、企業はそのような事態を未然に防ぐ努力が必要不可欠でしょう。
今回は厚生労働省が取りまとめた、令和3年度「過労死等の労災補償状況」の内容について紐解いていきます。

令和3年度「過労死等の労災補償状況」ポイントのは、下記の通りです。

・ 過労死等に関する請求件数:3,099件(前年度より264件増加)
・ 支給決定件数:801件(前年度より1件減少)
・ 死亡(自殺未遂を含む)件数:136件(前年度より12件減少)

脳・心臓疾患に関する事案は前年度より減少

まず、脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況です。
請求件数は753件で、前年度より31件減少しており、支給決定件数は172件で、前年度より22件減少しています。

また、脳・心臓疾患の請求件数の多い業種としては、「道路貨物運送業」が最も多く124件(うち女性3件)、次に「その他の事業サービス業」が63件(うち女性8件)、3番目に「社会保険・社会福祉・介護事業」が46件(うち女性34件)でした。
職種別に見ると「輸送・機械運転従事者(21.4%)」、「専門的・技術的職業従事者(14.6%)」、「サービス職業従事者(10.4%)」、「建設・採掘従事者(10.4%)」の順に多い結果となっています。
以前より過重労働が問題視されている業種として運送業、とくに運転従事者に関しては、圧倒的に多い結果となっています。一方で、「社会保険・社会福祉・介護事業」においては46件中34件が女性ということで、女性の件数が目立っていることに驚きます。

精神障害に関する事案は前年度より増加

続いて精神障害に関する事案の労災補償状況です。
請求件数は2,346件で、前年度より295件増加しており、支給決定件数は629件で、前年度より21件増加しています。
前項の脳・心臓疾患に関する事案は前年度より減少していましたが、もともと多い精神障害に関しては、請求件数・支給決定件数ともにさらなる増加が見られました。

精神障害の請求件数の多い業種としては、「医療、福祉」が最も多く577件(うち女性445件)、次に「製造業」が352件(うち女性99件)、3番目に「卸売業,小売業」が304件(うち女性163件)でした。
職種別に見ると「専門的・技術的職業従事者(25.5%)」、「事務従事者(21.8%)」、「サービス職業従事者(12.1%)」の順に多い結果となっています。
精神障害の事案に関しては、肉体労働ではなくバックオフィスでの業務だったり、顧客と直接関わる接客業などに多く見られることがわかりました。
支給決定件数のうち具体的な出来事別としては、上から順に「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」といったパワハラのカテゴリが最多の125件、続いて「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」という仕事の量や質に関する事案が71件、そして「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」といった事故・災害の体験が66件でした。

裁量労働制対象者の事案はほぼ横ばい

裁量労働制対象者においての労災件数も下記の公表があります。
支給決定件数のうち、脳・心臓疾患の支給決定件数は2件で、どちらも専門業務型裁量労働制対象者でです。
また、精神障害については7件で、そのうち専門業務型裁量労働制対象者が6件、あとの1件が企画業務型裁量労働制対象者でした。
脳・心臓疾患の支給決定件数は前年度にくらべて1件の増加、精神障害については2件の増加といったところですが、一昨年度とはまったく同数であり、もともと件数が少ないのもありますが、ほとんど横ばいといえるでしょう。
また、請求人が業務において新型コロナウイルス感染症に関連する出来事などがあり、申し立てたものは8件、うち支給決定件数は2件でした。
いずれも脳・心臓疾患の事案です。
災害や事故、病気に関しては不可抗力もありながらどの規模の企業にもいざという時の対応は求めれられます。それ以外にも、特にパワハラなど人的な要因については企業として徹底的に未然に防ぐ対策を講じていただきたいところです。

<参考>
厚生労働省「令和3年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」

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