「軽症の救急外来控えて」 長崎・大石知事 医療逼迫も、行動制限はせず

新型コロナ 発熱外来受診のフロー

 長崎県の大石賢吾知事は16日、臨時会見を開き、新型コロナウイルスの感染急拡大で県内の救急医療が逼迫(ひっぱく)しているとして、軽症や検査など緊急を要さない場合、救急外来の受診を控えるよう県民に呼びかけた。一方で「福祉サービスや公共交通などを含めた社会機能全体は深刻な状況に至っていない」として、現時点で行動制限は実施しない考えを改めて示した。
 県によると、県本土主要8医療機関の救急外来を8月上旬の夜間・休日に受診した人は、前月同期比1.3倍の744件に急増。その中で発熱など新型コロナ疑いは2.2倍の244件に。うち救急車による搬送も1.6倍の48件に上った。
 長崎、佐世保両市では救急搬送困難事案(医療機関への受け入れ照会4回以上、現場滞在30分以上)も増加傾向。8月14日までの1週間で51件に達した。現場から「軽症で歩ける人が検査のため救急車で来院する」「優先度の高い救急患者への対応に支障を来している」などの声が上がっている。
 現在主流のオミクロン株の重症化率は季節性インフルエンザと同程度。60歳未満は県内で0.01%と低く、軽症なら慌てて受診する必要はないという。県は、発熱やせきの症状が出たら、まずは市販の解熱鎮痛剤で様子を見て、症状が続けば平日の日中に最寄りの診療・検査医療機関を受診するよう求めた。
 一方、コロナ入院を受け入れる県内45医療機関でも、陽性や濃厚接触者となった職員が約650人(5日時点)おり、一般診療を制限している。コロナ病床使用率も57.3%(15日午後7時時点)と高い。
 ただ、知事は行動制限する段階にないとの認識を示した。理由について「社会全体の機能は深刻な状況には至っていない」「医療関係者からは『行動制限をすべき』という要望が(県に)上がってきていない」などと説明。記者から「どのような状況なら深刻と言えるのか」と問われると「明確に示すのは非常に難しい」と述べるにとどめた。
 医療機関に対し、新型コロナの発熱外来を受け付ける診療・検査医療機関としての登録も促した。本県の登録割合は、九州7県で最下位の33%(7月19日時点)。うち約6割は、かかりつけの患者のみに対応している。このため一部のクリニック(診療所)に患者が集中するほか、2次救急医療機関が逼迫する要因になっているという。


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