インド、高頻度・低コストを目指す小型衛星用ロケット「SSLV」初の打ち上げに失敗

インド宇宙研究機関(ISRO)は8月7日、新型ロケット「SSLV(Small Satellite Launch Vehicle)」の初打ち上げを実施しました。ロケットは途中まで予定通りに飛行したものの、最終段階で予定よりも早く燃焼が終了してしまったため、衛星を目的の軌道へ投入することはできませんでした。

【▲ サティシュ・ダワン宇宙センターから打ち上げられたSSLVロケット(Credit: ISRO)】

ISROが開発したSSLVは、日本時間2022年8月7日12時48分にインド南部のサティシュ・ダワン宇宙センターから打ち上げられました。打ち上げから約2分後に分離した1段目に続き、2段目、3段目の分離までは予定通り行われました。しかし、打ち上げから約10分後に点火されたキックステージ「VTM(Velocity Trimming Module)」のエンジンは、すぐに燃焼を停止してしまいました。

その数時間後にISROは、搭載されていた衛星が予定されていた高度356kmの円軌道ではなく、高度76×356kmの楕円軌道に投入されたとする声明を発表しました。原因はVTMで発生した不具合とされていて、衛星は大気圏へ再突入して失われたものとみられます。ISROの組織トップであるS. Somanath氏は「ロケットの第3段目までは、予定通り機能した」ことを強調し、最終段階で「データを損失した」と述べました。

SSLVは、小型衛星や超小型衛星の高頻度・低コストな打ち上げを目指して開発された全長34m・3段式の固体燃料ロケット(燃料に末端水酸基ポリブタジエンを使用)で、高度500kmの地球低軌道に重量500kgの衛星を投入する能力を持ちます。また、衛星を予定通りの軌道へ投入するため、キックステージであるVTMには液体燃料ロケットエンジンが搭載されています(モノメチルヒドラジンと一酸化窒素添加四酸化二窒素を使用)。

【▲ 組み立て中のSSLVロケット。垂直組み立てが行われる(Credit: ISRO)】

海外の宇宙開発メディアSpaceNewsによると、SSLVは2017年に開発がスタートし、当初の計画では2019年の打ち上げを目指していたということです。しかし、2021年に実施された燃焼試験の失敗や、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う宇宙産業の停滞のため、スケジュールに遅れが生じていました。

なお、今回打ち上げられたSSLVには、地球観測衛星「EOS-02」と超小型衛星(キューブサット)「AzzadiSAT」の2機が搭載されていました。EOS-02は、ISROによって開発された重量135kgの実験用光学リモートセンシング衛星です。また、AzzadiSATはインドの学生が開発した重量8kgのキューブサット(8Uサイズ)で、UHF-VHFトランスポンダ、放射線測定器、セルフィーカメラなど全部で75のペイロード(各重量は約50g)が搭載されていたとのことです。

【▲ SSLVに搭載されていた地球観測衛星「EOS-02」(中央)と超小型衛星「AzaadiSAT」(左)(Credit: ISRO)】

Source

  • Image credit: ISRO
  • ISRO \- SSLV-D1/EOS-02 Mission
  • ISRO \- SSLV-D1/EOS-02 Mission Brochure
  • SpaceNews \- India’s new SSLV rocket fails in first launch

文/出口隼詩

© 株式会社sorae