スマホに「10億円当選」 巧妙な手口で金銭要求 長崎県警「身に覚えないメール、相談を」

記者のスマホに残るサイトの画面(左)と「お支払い金額:2,000円」と印字された支払い伝票(画像の一部を加工しています)

 7月中旬。記者のスマートフォンにショートメッセージサービス(SMS)を介して1通のメールが届いた。題名は【【確認_通知】あなたの口座番号】。いかにもいかがわしい。ただ、これを取っかかりにしてニセ電話詐欺の新たな手口が垣間見えるかもしれない。そう考え、添付されていたURLをクリックした。
 差出人は「窓口担当菅野」。URLから「数え切れない思い出を count」というサイトへ飛び、画面に「この度は本当に1等10億円の当選おめでとうございます」と表示された。他の当選者の喜びの声や、10億円の受け取り方法などが記載されており、よく作り込まれているという印象だ。
 当選した経緯と10億円を受け取るまでの手順はこう書かれていた。▽過去9回行われているドリームナンバーズという宝くじに「82481」の番号で当選▽受け取りは銀行振り込み。銀行名や支店名、通帳の種類、口座番号、名義を入力する▽送金前に、情報登録料として2千円分のポイントをコンビニの電子マネーで購入する必要がある。
 調べたが「ドリームナンバーズ」なる宝くじを見つけることはできなかった。何より引っかかるのが「情報登録料」。詳細を聞くためサイト内のメール機能を使って「菅野」にポイントの購入方法を尋ねると、こう指示された。▽電子マネーで2千円分支払うレシートをコンビニ内の専用端末で印刷▽レシートをレジに持って行き、支払い▽レジで発行したチケットの番号をサイトに登録する-。
 やりとりを続けている間にも、サイト内で架空の「当選者」たちからのメッセージが届き、金銭欲をかき立ててくる。巧妙だ。7月下旬、記者は指示された通り、長崎市内のコンビニに向かった。

ニセ電話詐欺の県内被害状況

 「被害者たちはこんなふうに、メール一つでだまされていくのか」と暗い気分で端末を操作しながら、実際にレシートを印刷するところまで試す。そして、ここで自分は記者だと明かした。それまで何度もメールで指示してきた菅野からの連絡は途絶え、サイトにもアクセスできなくなった。するりと追っ手をかわし、深い闇に逃げ込んでしまったように思えた。
 この手のSMS詐欺は、最初は少額を要求し、その後「まだ登録が完了していない」などと口実をつけ、繰り返し被害者から搾り取るのが特徴だ。県警によると7月末時点で19件発生し、今年のニセ電話詐欺認知件数の約31%を占める。中には計約150万円をだまし取られた人も。県警生活安全企画課は「身に覚えのないメールでお金の話をされたら詐欺を疑う。家族や警察に相談してほしい」と注意を呼びかけている。


© 株式会社長崎新聞社