長崎県の魚突き規制 全国から反発 「まず協議を」愛好家ら署名活動

ゴム付きのやすを手に海に潜る遊漁者=西海市

 「趣味の魚突きをするために長崎に移住してきたのに(必要な)道具が使えなくなりそうで困る」-。長崎新聞の情報窓口ナガサキポストのLINE(ライン)に、東京から長崎県内に昨年移り住んだ20代男性から、こんな意見が寄せられた。取材すると、県が地元漁業者とのトラブルを理由に愛好家(遊漁者)の漁具を規制しようとしているのに対し、全国から反対意見が寄せられ、使用を継続できるよう漁業者との協議を求める署名活動に発展していた。
 魚突きは、ウエットスーツにシュノーケル、足ひれ姿で海に潜り、鋭利な金具を棒の先端に付けた漁具「やす」で魚を突き刺して捕る遊び。ゴムの力で棒状の本体を押し出す。県漁業調整規則では、手に握ったまま突くのは認められている。
 魚種が豊富な長崎の海は、全国の愛好家に人気が高い。その半面、クエなどの高級魚も狙われ、地元漁業者とのトラブルが増えた。「手に握ったままでは捕れないような大物の魚まで捕られている」と訴える漁業者も多い。
 県はこの状況を看過できないとして、遊漁者の使用可能な「やす」について「ゴムなどの発射装置を有するものを除く」と規則に明文化する方針。「以前からゴムなどで投射する場合は発射装置を有するものとして規制してきた」と強調する。しかし愛好家らは「これまではゴム付き『やす』の使用は認められていた」と指摘。両者の認識は食い違っている。
 愛好家が反対するのは、ゴムの規制は魚突きをできなくすることに等しいからだ。「長崎の海が魅力的で魚突きを続けたくて県外転勤を断った」という県内在住の20代男性は、「ゴムのない『やす』はリールのない竿(さお)で釣りをするようなもの。実質禁止は勘弁してほしい」と願う。
 東京から移住してきた男性は、問題の本質は規制自体ではないと考える。「当事者である魚突き愛好家を議論に参加させないまま、実質的な締め出しが決まりつつある。(漁業者や県との)議論の場さえあれば実効性のある解決策を示せるのに」と語る。
 県は今月中に漁業者や識者らでつくる「海区漁業調整委員会」に規則改正案を諮問する。答申を経て国へ認可申請し、来月公布、来年3月施行を目指している。
 一方、県が7月15日までの約1カ月間実施したパブリックコメント(意見公募)には約千件の声が寄せられた。県パブコメの相場と比べ2桁多く、過半数は反対や再検討を求める意見だった。
 さらに愛好家らは建設的な議論の場を求めて団体をつくり、署名サイトを使って1週間で約2千人の賛同を集め、要望書とともに7月21日付で県に提出した。漁業者と海面をシェアしたり、磯焼けの原因となるウニを協働で駆除したりする他県の事例を提示して共存の可能性を探りたいという。
 県側は「(団体側と)協議するか検討中」としている。

魚突き規制に関するインターネット署名の画面

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