この凶暴サメ、しつこすぎる!! 『ロスト・バケーション』午後ローで放送! ブレイク・ライヴリー主演作

『ロスト・バケーション』© 2016 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

ストーカー並みにしつこいサメと戦う水着美女

『JAWS/ジョーズ』(1975年)の歴史的大ヒット以来、半世紀が経ち、“サメ”は映画の1ジャンルとして定着した感がある。夏になれば海、海に行けばビーチ、ビーチには水着の美女、水着の美女が泳げばサメに襲われる……というのがその決まりだ。『ロスト・バケーション』(2016年)もまた、同じ決まりを踏襲して水着の美女(ブレイク・ライヴリー)がサメに襲われる映画であるが、監督がジャウマ・コレット=セラなので、ただのパニック映画にはなっていない。

ナンシー(ブレイク・ライヴリー)は、アメリカ人の医学生。愛する母親をガンで亡くしたばかりで、医学の勉強に興味を失い、母親が自分を妊娠していたときに訪れたという思い出のビーチでサーフィンをするためにメキシコまでやってきた。

その日、二日酔いの友人をホテルに残して、地元の人しか知らない、夢のように美しいビーチにたどり着き、さっそくサーフィンを楽しむナンシー。夕暮れになり、地元の青年たちが帰っても海に残り、最後の1本を決めようとしてバランスを崩して海中に放り出されたとき、ふいに巨大なサメが襲いかかってくる。

切られた腿の傷をリーシュコード(サーフィンと足首をつなげる部品)で止血し、干潮のときだけ現れる岩礁の上に避難したものの、そこはビーチから200mも沖にあり、助けを呼ぶ彼女の声は届かない。ナンシーは絶望的な状況の中で、生きのびるための方法を必死で探るが……。

ブレイク・ライヴリーの熱演とコレット=セラ監督のサービス精神

主演のブレイク・ライヴリーは1987年8月25日カリフォルニア州生まれ。父親は俳優、母親は演技コーチでタレント・マネージャー、兄姉も俳優という芸能一家で、子供の頃から自然に女優の道に進んだ。2005年『旅するジーンズと16歳の夏』で、仲良し4人娘の1人ブリジットを演じて注目され、2007年から放映されたTVシリーズ『ゴシップガール』で、誰もが憧れる完璧な女の子セリーナを演じてスターになると同時に、ファッションアイコンとしても注目を集めるようになった。

映画出演は『アデライン、100年目の恋』(2015年)や、ウディ・アレンの『カフェ・ソサエティ』(2016年)などがあるが、キャリアとしてはまだまだ。ノーメイク、出ずっぱりで、俳優としての真価を見せたのは本作が初めてだろう。私生活では2012年にライアン・レイノルズと結婚し、3児がいる。

監督のジャウマ・コレット=セラは1974年スペインのバルセロナ生まれ(ジャウマのカタロニア語読みはジャウム)。18歳のときに映画監督になるためアメリカに渡り、コロンビア大学で学ぶ。MTV、CM制作を経て、『蝋人形の館』(2005年)で長編監督デビュー。『エスター』(2009年)でファンタ系の映画ファンから注目され、『アンノウン』(2011年)から始まるリーアム・ニーソン主演4作で監督としての名声を確立し、ディズニーの大作『ジャングル・クルーズ』(2020年)の監督に抜擢された。最新作はドウェイン・ジョンソン主演のアメコミ映画『ブラックアダム』(2022年12月2日公開)。

コレット=セラ映画の特徴は、上手いのも下手なのも荒っぽいのも、とにかくアイデアだけはたっぷり詰め込んで、観客をフルに楽しませようというサービス精神と、B級映画テイストにある。『ロスト・バケーション』は、そんな彼の良さが最もよく出た1本で、途中までは文句なく完璧なのに、なぜかサメが出てくると、いきなり作り物っぽくなるところがご愛敬。やっぱり長年培ったB級テイストから離れられないのかもしれない。

さすがCM出身だけあって、近景、遠景、アップ、水中撮影、スローモーションなど、映像テクを駆使してスリルを盛り上げる、最初から最後までドキドキしっぱなし。もちろんブレイク・ライヴリーのスレンダーな肢体もたっぷり楽しめる。

文:齋藤敦子

『ロスト・バケーション』はテレビ東京「午後のロードショー」で2022年8月17日(水)13時40分から放送

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