竹本は僕だなと感じました
――原田(琥之佑)さんは演技を披露するのも初めてということですが。
原田琥之佑:
はい、初めてでした。
――初演技の作品でしたが、大抜擢ですね。
原田:
自分でもビックリしています。新しいことに挑戦しようということでオーディションのお話をいただいたので、落ちて当たり前だから一度経験してみようくらいの気持ちだったんです。なので、合否に関してしはそれほど気にはしていなかったのですが、「映画の件だけど、受かったよ。」と連絡をもらったときは、まさかと思って聞き直したくらいでした。
――普通はそうですよね。『サバカン SABAKAN』で描かれている時代は原田さんが生まれる前の話で、家庭環境も兄妹が多い点や母子家庭という点で違う部分もありますが、脚本を読まれて竹本(健次)のキャラクターをすんなりと受け止めることができましたか。
原田:
台本を初めて読んで竹本は僕だなと感じました。長崎弁など違う部分はありますが、不器用なところや喧嘩早いところ・口が悪いところ、でも本当は素直になりたい・友達になりたいれけれど強がってしまうところは似ているなと思いました。なので、思ったより役作りの苦労はなかったです。
――普段の原田さんに近いから映画の中でも自然な姿だったんですね。撮影に入るにあたって金沢知樹監督とお話しされたことはありましたか。
原田:
「竹本はこの物語のカギを握る役だから。」と伺いました。僕がすんなりと役に入れたことに関しては「できて当然。」とおっしゃってましたね。
――オーディションの時に原田さんを見て竹本がやってきたと感じられたんですね。
原田:
そうだったらいいですね。
――金沢監督はどんな方ですか。
原田:
凄い接しやすい方です。子供みたいなところもあって、大人と一緒にいるという感覚はすくなかったです。すごく優しい方でした。
――優しい親戚のおじさんみたいな感じですかね。
原田:
そうですね。
――本当にいい関係性・チームで制作を進められたんですね。
原田:
はい。初めての映画だったのでとてもありがたかったです。
自然体でいることができました
――主役である久田(孝明)役の番家一路さんとお話されたことはありましたか。
原田:
撮影に入る前に稽古3割・お話7割みたいな感じのリハーサルの時間が何度かあったんです。そこで一路くんと仲良くなれていいコンビになれました。
――原田さんは竹本と自分が似ていたとのことですが、番家さんは久田と似ていましたか。
原田:
はい、似ているなと感じました。久田はちょっと抜けてて、それでいて太陽みたいに明るい男の子じゃないですか、そんなところが似ています。現場では一路くんの明るさには本当に助けてもらいました。僕は初めての演技ということで凄く緊張して、怖かったんです。そんな時に一路くんから「やべぇ、緊張する。」と笑顔で声をかけてもらえて、その笑顔を見て緊張がほぐれました。
――やはり緊張されたんですね。
原田:
全てが初体験なので、凄く緊張しました。緊張を乗り越えられたのは一路くんをはじめとしたみなさんに支えてもらったおかげです。最初の一歩を踏み出せたのでここまで来たらやるしかないと思い、緊張しながらも頑張りました。金沢監督も常に話しかけてくれて緊張をほぐしてくれたので、徐々に怖さもなくなりました。
――これが本当に映画初出演・初演技とは思えなくらいの堂々とした姿でしたよ。
原田:
ありがとうございます。
――久田と竹本は最初それほど仲良くなく、冒険を通して二人の関係性がつくられていきます。原田さんと番家さんはスグに仲良くなられたとのことですが、映画の中でその関係性をリセットして改めて仲良くなっていくのは大変ではなかったですか。
原田:
大変ではなかったです。作中で喧嘩するシーンもありますが、仲が悪くなったときは無視する雰囲気を出せればいいなと思ったんです。具体的には目をそらすしぐさをすれば仲良くない雰囲気が出ると思ったので、喧嘩をしていたシーンでは久田と目を合わせないようにしました。その時の関係性や感情は久田と竹本との距離感で出すようにしました、喧嘩のシーンも含めて大変だったなと思うことはなかったです。
――そういうことを掴めているのが凄いですね。本当に演技の勉強はされていなかったのですか。
原田:
しいて言えば学芸会くらいで、演技の勉強は全くしていないです。
――普通の人と変わらないのに、そこに気づいて実践しているのが凄いですね。現場で皆さんにアドバイスを聞いたり・受けたりしたのでしょうか。
原田:
もちろんほかの俳優のみなさんやスタッフさんに助けてもらいました。金沢監督からは長崎の方言としてこの言い回しの方がいいといったアドバイスもいただいて、たくさん助けてもらいました。すんなりと演技できるわけがないと思っていたのですが、みんなが本当に優しく・接しやすいかたたちだったので、自分を預けられると思えたんです。皆さんのおかげで自然体のままでいることができました。
――映画を経験されていかがでしたか。
原田:
演じる側もとても面白かったですが、スタッフのみなさんを間近で見られたのは貴重な経験でした。スタッフのみなさんの仕事を見て、監督もやってみたいという気持ちが湧いています。
今も映画に出たことが信じられない
――完成した映画を観られていかがでしたか。
原田:
僕は映画が大好きでよく観ますが、スクリーンの中に自分がいるのは不思議な感覚で、今も映画に出たことが信じられないです。
――本当にハマり役のお二人なので、ほかの人が演じるのは無理です。リメイクできないですよ。
原田:
そう言っていただけるのは嬉しいです(笑)。
――ご家族の方は試写を見られたのですか。
原田:
祖母と叔母と両親で見に行きました。全員泣いていました。祖母からは「カメラを意識していないで演じていて、凄い自然だった。」と言われました。それは家族だからいいように見えていたのかなとも思います。
――実際にカメラを意識していない演技でした。だからこそより自然な姿に見えていたんですね。
原田:
演技が初めてだったのでどうあるべきかを知らなかったんです。なので、今まで観てきた映画を思い出しながら演じてみたらたまたま出来ていただけです。
――それが凄いです。確かにカメラを意識していることを感じると冷めてしまいますからね。
原田:
ありがとうございます。
――作中の二人は大人になって夢を叶えていますが、原田さんの夢は何ですか。
原田:
俳優や映画監督などいろいろありますが、これというのはまだ決められていません。いろんなことに挑戦して見つけたいですね。
――この映画は本当にノスタルジーを感じる素敵な作品でした。
原田:
そう感じていただけたのであれば嬉しいです。青春の少し前のせいしゅんを描いた子供が主役の物語なので、80年代を知らない方から大人まで多くの方が楽しめる映画になっていると思っています。物語とともに僕が現地で観た素敵な風景をぜひ劇場の大きなスクリーンで楽しんでいただきたいです。
©2022 SABAKAN Film Partners