片上港の活況伝える古い写真公開 津山の江見さん、本紙きっかけに

高台から片上港の全景を写した1枚。手前には柵原鉱山の鉱石を運ぶ片上鉄道や係留中の貿易船が見える

 耐火れんがや鉱石を運び出す東備地域の海運拠点として栄えた片上港(備前市)の古い写真が見つかった。活況を伝える約10枚は、大正中期~昭和初期の撮影とみられる。港は岡山県東部を縦断した片上往来の起点で、終点に当たる津山市の老舗・江見写真館に写真が残っていた。

 本紙企画「吉備を環(めぐ)る~地域をみつめ 未来をひらく」の第11部片上・倉敷往来を読んだのがきっかけとなり、館主の江見正暢さん(74)が保管していた写真を公開した。祖父で3代目館主の故・正さんが、フィルム普及前の感光材料・ガラス乾板を使って撮影した。

 写真からは港の熱量が伝わってくる。高台から全景を収めた1枚は、柵原鉱山(美咲町)の鉱石を運んだ片上鉄道の蒸気機関車と貿易船が鮮明に捉えられている。てんびん棒を担いで鉱石を船に運び込む人たちからは、声が聞こえてきそうだ。

 正さんは、柵原鉱山から社内向け記念アルバムの作成を請け負っており、写真の一部も重複していることから、その業務の一環で撮ったとみられる。

 備前市歴史民俗資料館の中務睦美学芸員(28)は「地元写真館が撮った写真はあるが、当時活動していた写真館も少なく数があまりない。貴重な史料と言える」と話す。

 正さんは生前、ハーレーダビッドソンなど愛用のバイクに機材を積んで撮影に駆け回ったといい「片上港へもバイクで行ったのでは」と正暢さん。ガラス乾板は再利用するのが一般的だが「史料価値が高いと考えて残したのだろう。アングルにこだわりが感じられる良い写真。日の目を見て祖父も喜んでいるはずだ」と話した。

 片上往来 備前市の片上港から吉井川に沿って北へ延びる。古くは平安時代、美作国から京都の朝廷に納める鹿の角や革が往来を通って港に運ばれたとされる。大正期に入ると往来沿いに、片上鉄道が開業し、柵原鉱山の鉱石を載せた列車が港に向けて走り抜けた。

てんびん棒を担いで鉱石を貿易船に運び込む人々

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