小麦高騰と米粉の商機 コメ減産の流れを変えたい 社説(8/18)

 ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や円安の影響で輸入小麦の価格が高騰する中、国産の代替穀物として米粉の商機が拡大している。企業などからの引き合いが増してニーズは高まっており、小麦粉の値上がりで価格差も縮小している。長年、生産者を苦しめてきたコメ余りに伴う減産と米価下落の流れに歯止めをかけ、経営安定への誘導策を積極的に展開してほしい。
 年2回改定される輸入小麦の4月期の政府売り渡し価格は、昨年10月期比で17.3%上昇した。世界有数の小麦輸出国ウクライナでは、今年の小麦集荷量が前年比で4割以上減る見通し。10月期の価格改定では4月を超える上昇幅になるとの試算もあったが、家計へのさらなる打撃を防ぐため、今回はひとまず据え置きの方針が示されている。
 農林水産省が公表している「米粉をめぐる状況」によると、2021年度の米粉生産量と需要量は初めて4万トンを超えた。小麦の価格高騰に加え、小麦アレルギーの人も食べられる「グルテンフリー」の食材として国内外で市場が拡大し、潜在的な需要は既に国内の供給能力を上回る。
 原料価格は小麦が1キロ当たり60円程度、生産者に10アール当たり5万5000~10万5000円の交付金が支払われている米粉用米は50円程度。ただ、製粉コストは小麦粉が50円程度に対し、米粉は70~340円程度で、製品段階になるとまだ割高感がある。
 米粉の価格競争力を高めるためには、製粉コストの低減に向けた加工設備の開発や導入などへの一層の支援が欠かせない。原料となる転作のコメを長期安定的に供給するために、生産流通体制も構築する必要があるだろう。
 東北では、早くから秋田県の大潟村あきたこまち生産者協会が米粉を使った食品などの製造を手がけ、国内外に販路を開拓してきた。パン以外にも用途は広がっており、福島県天栄村のアルファ電子は須賀川市に大規模な米粉麺の工場を整備。大消費地の東京など、米粉の普及を後押しする自治体も増えている。
 コメの年間消費量は半世紀以上も減り続け、ピーク時の半分以下となった。食生活の変化や人口減少で、主食用米の需要量は今後も年数万トンの減少が見込まれる。21年産米の相対取引価格は前年より1割以上も下落。民間在庫量も若干改善の兆しはあるが、厳しい状況は変わっていない。
 出口が見えない縮小均衡と独歩安の打破に向け、米粉を使って食用としての用途を多様化し、消費につなげる可能性を広げたい。輸入農産物の値上がりを好機と捉えれば、飼料用米の活用促進、学校給食の米飯拡大など、てこ入れすべき施策は数多くある。
 生産者の手取り収入を維持拡大し、営農意欲を取り戻すためにも、コメの減産から増産への転換を農政の大きな目標として据えるべきだ。

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