安田純平さんらしき男性の「韓国人です」編集カットはなぜ行われた?報道の本質すら歪めるメディアの「韓国忖度」が浮き彫りに

TBSはなぜカットした?

2015年6月にシリアへ入国した後、行方不明になっているフリージャーナリスト、安田純平さん(44)と見られる男性の動画が7月31日にネット上で公開され話題となっている。映像の中で、黒衣の男二人に自動小銃を突きつけられた男性は「私の名前はウマル。韓国人です」と名乗り、「とてもひどい環境にいます。今すぐ助けてください」と救出を訴えた。

だが、安田さんと見られる男性は、なぜ急に「韓国人」を名乗ったのだろうか。その背景には「戦場ジャーナリスト」のしたたかさと、メディア報道の歪曲した実態が見え隠れする。

「戦場ジャーナリスト」と称する安田さんが拘束を受けるのは、2003年イラク軍に拘束されて以来、今回で5回目。性懲りもなく取材を繰り返していた裏には「拘束されるたびに知名度が上がり、執筆依頼やテレビ出演も増える」(紛争地取材関係者)というマスコミの体質もあったのかもしれない。

また、安田さん本人はTwitter上で、外務省から危険地域への渡航を制止されたことを明かしているが、そんな政府に「世界でもまれにみるチキン国家」などと悪態を繰り返していたようだ。

それゆえ、今回の報道を受け、SNS上には安田さんを”自業自得”だとする声が多数上がっている。一般視聴者も、戦場ジャーナリストなる職業から「危険な現場からの報道こそ至上」とする奢りと、「政府はその報道のバックアップをするべきだ」とする横暴さを読み取ったのではないだろうか。

■「韓国人です」は放送せず!? パスポート画像から韓国名を消した不自然報道

さて、今回の新映像で注目すべきは安田さんが「韓国人です」と話している点である。

安田さんは今年5月時点の画像で「助けてください これが最後のチャンスです 安田純平」と書かれた紙を持っていたにもかかわらず、日本政府との交渉は一向に進んでいない。外務省領事局・邦人テロ対策室は「力を尽くしている」としているものの、菅義偉官房長官は「(テロリストと交渉しない)政府の対応方針が変わることはない」(3月16日記者会見)と一貫している。

それゆえ中東の消息筋には、安田さんの「韓国発言」は日本政府の対応に業を煮やした拘束グループが「要求先を変更したのではないか」との見方も多いようだ。

ところが、 TBSとテレビ朝日の放送では「韓国人です」という部分を編集してカット。この部分にこそ、報道の新規性があるにもかかわらず、それを歪めてしまう「韓国忖度」を行なってしまっているのだ。

「韓国忖度」については、以前にもNNN(日本テレビ系列)のニュースなどで安田さんのパスポートが映された際に「純平」の部分だけ映され、苗字の箇所にモザイクが掛けられていたことからも、何らかの配慮がなされたのではないかと囁かれていた。

テレビにおける通名報道など賛否の分かれる議論ではあるが、今回の安田さんの「韓国人です」発言に関してはニュースの根幹である。ネット上でも公開されている情報をテレビ局側がわざわざ編集カットして、本質が捻じ曲げられるならば、これこそフェイクと言うべきではないのか。

安田さんが韓国人であれ、日本人であれ、いかなる志を持ったご職業であれ、いち早い救出が望まれることに関係はない。公平ならざる報道の忖度が事実を歪め、むしろ解放の妨げにならないことを祈りたい。

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