「吉念仏踊り」次世代へ継承を ユネスコ「未来遺産」登録申請

250年以上の歴史を誇る吉念仏踊り。伝統の継承と次世代育成に向け、プロジェクト未来遺産に申請されている=16日、法福寺

 真庭市吉の法福寺で250年以上の伝統を誇る吉念仏踊り(県重要無形民俗文化財)の保存会(25人)は、同踊りを日本ユネスコ協会連盟の「プロジェクト未来遺産2022」に登録申請した。少子高齢化が進む中、プロジェクトの柱となる担い手の育成事業を新たに始めており、認定によって次世代への継承機運の高まりを目指す。

 同踊りは、江戸期に流行した疫病を鎮めるために近隣の寺から習ってきたと伝わる。いわゆる“踊り歌”はなく、先祖の戒名などが読み上げられるたび、念仏とともに太鼓やかねを鳴らし、「サイハラ」と呼ばれる和紙の房を付けた棒を手にした2人が躍動的な動きを繰り返す。盆踊りの原型とも評される。

 もともとは同寺の檀家(だんか)衆が続けていたが、維持が困難となり、1961年の県重文指定を機に有志で保存会を結成。毎年8月16日に奉納してきた。ただ、近年は保存会員の高齢化が進み、担い手となり得る地区内の若者も減少しているという。

 こうした状況を踏まえ、保存会は地区内外の中高生や大学生を招き、踊りを体験してもらうことを計画。参加者には、保存会と津山ユネスコ協会の連名で認定書を贈り、継続的に加わってもらう。これらの内容を申請書に取りまとめ、7月中旬にプロジェクトに応募。書類選考を通過すれば、現地調査や有識者らの選考が行われ、結果は来年1月以降に発表される。

 今年の踊りが行われた16日夜は、落合地域の中高生4人が保存会員9人に交じり、伝統を体感。音頭取りの「ナムアーミダイ、ブーツ、ソークサイ」の念仏唱が響く中、踊り手たちがかねと太鼓に合わせて機敏に舞った。かねを担った生徒たちも真剣な表情で体を動かした。

 「奥深くやりがいがある。できる限り参加していきたい」と美作高2年河崎徠人(らいと)さん(16)。保存会の筧義之会長(64)は「やる気が感じられ、非常に頼もしい。若い人たちを育てながら伝統をしっかり守っていきたい」と話す。

 プロジェクト未来遺産 日本ユネスコ協会連盟が、100年後の子どもたちに伝えたい地域の文化・自然遺産を守る市民活動を2009年から認定。19年までに計73件が登録され、県内ではNPO法人の英田上山棚田団(美作市)と倉敷町家トラスト(倉敷市)の活動が選ばれた。認定されると、同連盟の助成が受けられ、活動はホームページなどを通して広く周知される。

担い手育成事業で招かれた落合地域の中高生4人はかねを担当。雨のため途中から室内で行われた

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