4冠王者ターキントン、自身500戦の節目で“ダブル”達成。現王者サットンも勝利/BTCC第7戦

 8月13~14日にスネッタートンで争われたBTCCイギリス・ツーリングカー選手権第7戦は、この週末にシリーズ通算500戦目を迎えた“4冠王者”コリン・ターキントン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)が、選手権首位ゆえにエクストラの“ハイブリッド・パワー”が使用不可の条件にも関わらず、予選ポールポジションからレース1、レース2と連勝を達成。続くレース3は王者アシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)が意地の逆襲で勝利を収めたものの、ターキントンがポイントリードを拡大する結果となった。

 イギリス・ノーフォーク州に位置するスネッタートンは、ターキントンが得意中の得意とする場所でもあり、過去2年間で表彰台を逃したのは一度切り、6戦3勝を記録するゲンの良いトラックでもある。

 それでも、同地にポイントリーダーとして乗り込んできた“4冠王者”は、スポーティングレギュレーションにより今季導入の共通ハイブリッド・パワーを使用することができず、週末に向け慎重な見通しを語っていた。

「そう、選手権首位はエクストラの出力が使えないから(戦績により使用可能秒数の上限を規定)予選に向けてBMWを望むとおりのセットアップにすることが、これまで以上に重要になるだろうね」と語ったターキントン。

「これは(3位、3位、4位を記録した前戦)ノックヒルの成功に対するペナルティだから、今回はベストを尽くすことに集中し続ける必要がある。歴史的に僕らはスネッタートンで素晴らしいペースと結果を出してきたし、その傾向を継続するために出来る限りのことをするつもりだ」

「また今週末はコクピット内の暑さが再び課題になるだろうし、2日間で合計6回も、その猛暑の中でハードワークすることになる。だからこそ、フィジカル・フィットネスとパーソナルケアも重要な要素になるだろうね」

 そう見通しを語っていたターキントンだったが、プラクティス1では前半戦を牽引したトム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8・トレードプライスカーズ.com/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)が、続くプラクティス2では僚友ジェイク・ヒル(MBモータースポーツ・パワード・バイ・ロキット/BMW 330e Mスポーツ)がトップタイムを記録するも、予選に入ると戦況は一変。うだるような暑さの中で実施された30分間のセッションでは、終始ポール争いに絡んだターキントンが今季3度目の予選最上位を記録してみせた。

「もう全然、まったく予想外のポール獲得は素晴らしい結果だ。走行セッションごとにセットアップを一段階上げて、BMWをスイートスポットに入れることができたね。プラクティスではそれほど速く見えなかっただろうが、それは予選のためにタイヤを温存していたからさ」と、余裕のコメントを残したターキントン。

「クルマを正しい方向に微調整し、ウォームアップ段階でタイヤに注意し、予選ではアタックラップのタイミングを完璧にする必要がある。温度が高すぎたり不足したりした状態でホットラップを開始するのは、簡単だけど失うものが大きいんだ」

「最初のアタックも良かったけれど、最後のランに向けリヤを少し落ち着かせて、コンマ数秒を稼いだ。WSRのようなチームと一緒にいると、そこに経験があるから適切な判断を下す確率が高くなる。僕らはそれを的確に捉え、報われたってことだね。明日も楽しみにしている」

北米、アジアと同じく熱波に見舞われているヨーロッパ。この週末のイギリス・ノーフォーク州も酷暑となった
予選ではトップ5で唯一の”非 BMW”となったトム・イングラム(Bristol Street Motors with Excelr8 TradePriceCars.com/ヒョンデi30 Fastback N Performance)
前戦勝者の僚友ジェイク・ヒル(MB Motorsport powered by ROKiT/BMW 330e M-Sport)を抑え、まずはコリン・ターキントン(Team BMW/BMW 330e M-Sport)がR1を制圧する
「WSRのようなチームと一緒にいると、そこに経験があるから適切な判断を下す確率が高くなる」と語ったターキントン

■ターキントン「500レースは大きな節目であり、今日はそのご褒美だ」

 名門WSRで長年エースを務める男の言葉どおり、迎えた日曜最初のヒートからフロントロウの僚友ヒルに先んじてターン1のホールショットを奪うと、最初はインフィールドにマシンを止めたマイケル・クリース(カーストア・パワー・マックスド・レーシング/ヴォクスホール・アストラBTCC)により、続く2回目はジョシュ・クック(リッチエナジー・BTCレーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)とエイデン・モファット(レーザー・ツールズ・レーシング/インフィニティQ50 BTCC)が絡むアクシデントにより、都合2度のセーフティカーが導入されるも、その都度リスタートで盤石の反応を見せたターキントンが前線から物事をコントロール。まずは“ライト・トゥ・フラッグ”で最初の勝利を収めてみせた。

 続くレース2でもポール発進を決めたターキントンは、オープニングラップこそふたたびヒルとのサイド・バイ・サイド、瞬間的にはポジションを入れ替えながらの好バトルを繰り広げるも、ホームストレート帰還時点で首位を維持した元チャンピオンが、貫禄の走りでふたたびのトップチェッカー。2位のヒルに続き、3位にイングラム、4位アダム・モーガン(カーガッツ・ウィズ・シシリー・モータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)、5位ステファン・ジェリー(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)と、前ヒートとまったく同じ顔ぶれのトップ5となった。

「夢のような週末だし、リードしているときでも簡単なことなんて何もないんだ。それに、今回のコクピットは僕の人生で『もっとも暑い』環境だったことは間違いないね!」と、まずは連勝の喜びを語ったターキントン。

「チームはこのスネッタートンで本当に速い3シリーズを用意してくれた。そう、過去3年間と同じようにね。このチャンピオンシップでうまくやるためには、自分のゲームのトップに立つ必要があり、チームには他にも2名の速いドライバーが所属していて、お互いを次のレベルへと引き上げているんだ」

「速いチームメイトがいることはときどき苦痛だが(笑)、それは僕らにも利益をもたらす。僕らはいつも限界に挑戦しているし、500レースは大きな節目であり、今日はそのご褒美だ。これまでのキャリアとBTCCでの成功にとても感謝しているけれど、僕はまだまだ『ハングリー』だよ」

 週末最終ヒートのレース3は、リバースポール発進となった王者サットンがダニエル・ロウボトム(ハルフォーズ・レーシング・ウィズ・カタクリーン/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)らのチャレンジを退け、最終的に2位表彰台を得たジェイソン・プラト(リッチエナジー・BTCレーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)を4.556秒引き離してフィニッシュ。

 プラトは自身650戦目を表彰台で飾る結果となり、3位には今季よりスピードワークス・モータースポーツ加入のリッキー・コラード(TOYOTA GAZOO Racing UK/トヨタ・カローラGR Sport)が続いたものの、レース後の長い審議の末にイングラムとの攻防が“クロ”と判断され降格。最終的にヒョンデのイングラムが3位を奪回している。

 この週末でランキング2位につけるイングラムとのポイント差を15点に広げた首位ターキントン。続くBTCC第8戦は、ふたたび2週間の間隔を空け8月27~28日にスラクストンで争われる。

レース2でも勝利を飾ったターキントンは、実質2戦連続のポール・トゥ・ウインとなった
リバースグリッド採用のレース3は、前ヒートで9位だった王者アシュリー・サットン(NAPA Racing UK/フォード・フォーカスST)が主導権を握る
シビック同士の対決を制したジェイソン・プラト(Rich Energy BTC Racing/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)が、自身650戦目を表彰台で飾る結果に
レース3で3位表彰台を得たかと思われたリッキー・コラード(TOYOTA GAZOO Racing UK/トヨタ・カローラGR Sport)だったが、ペナルティ裁定に泣き4位に

© 株式会社三栄