<金口木舌>映画の恩送り

 「もやもや」を抱えた思春期、負のエネルギーを昇華させてくれたのは映画や音楽だった

▼「もやもや」に違いや濃淡はあるし、映画や音楽以外の選択肢もあるが、多くの若者がそういったものを通して自分の中に何かを見付け、人生を選ぶ大人になるのではないか

▼先週末、やがて中学生になる娘がコザの街を一人で探検し、沖縄市のカフェ映画館「シアタードーナツ・オキナワ」に入り込んだ。土産のドーナツを買いながら娘は「帽子と眼鏡の人」(店主の宮島真一さん)に「どんな映画を上映しているんですか」と尋ねたそう

▼宮島さんは大人たちが学生に映画鑑賞権をプレゼントするチケットの仕組みを紹介し、「無料だから今度見においで」と声をかけたと娘に聞いた

▼「恩送り」という言葉がある。世話になった人への「恩返し」ではなく、恩を別の人につなぐことだ。自分と向き合う時間も多い若者には、ぜひ無料チケットで映画を見てほしい。映画が救いや学びとなった思春期を振り返りながら、大人としては学生にチケットを贈らねば。

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