耕作放棄地を開墾して育てたブドウを醸造し、赤ワインを地元の新たな特産品にするプロジェクトが小田原で進行している。今夏には市民ボランティアらが開墾した畑で房が実り初収穫。将来的にはワイナリーも開設も目標に据え、市民らは「一流ではなくても小田原産と胸を張れるワインにしたい」と夢を思い描く。
今月11日、相模湾を一望する標高200メートルの丘陵地にブドウの収穫作業のため、約60人のボランティアが集まった。2年かけ育てた700本の苗木が初めて房を実らせ、約70キロを収穫した。「苦労して育てたブドウがかわいくて仕方が無い」。毎週のようにボランティアで農作業を手伝ってきた鳥越健さん(76)は目を細めた。
プロジェクトの呼びかけ人は前市長の加藤憲一さん(58)。市長就任前から市民活動の傍ら農業や漁業にも携わり、在任時も農業再生に取り組んだものの、市内に124ヘクタール(20年度)も広がる耕作放棄地対策は“宿題”でもあった。
市長退任後、FMおだわらの鈴木伸幸社長が所有していた農園と隣接する耕作放棄地を借り受け、「みんなで耕作放棄地で育てるなら夢があるものを」(加藤さん)と、鈴木社長らとともにワイン醸造を目指すことにした。