どうなる京都大学のユーチューブ講義 10万人登録も廃止方針、研究者反発

講演などの動画を公開している京都大OCWのホームページの画面

 京都大学がインターネット上に公開する講義動画の行方が揺れている。京大は動画の管理・運営を担ってきた高等教育研究開発推進センターの9月末での廃止を8月4日に公表し、約6300の講義・講演を動画配信するプラットフォーム(OCW)などを閉鎖するとした。しかし研究者の強い反発もあり、OCWについては「10月以降、運用する方策を学内の関係者と協議する」と6日後に表明した。状況は流動的だが、学内からは「コンテンツの蓄積を無にしないでほしい」との声が上がる。

 同センターは、1994年にできた前身の組織を引き継ぐ形で2003年に設立。現在はOCWをはじめ、オンラインで講義や講演を学内外に公開する役割などを担っている。

 05年に開設されたOCWでは、ノーベル賞受賞者の山中伸弥さんの公開講演や地球科学者の鎌田浩毅さんの最終講義を無料で見ることができる。コンテンツの多くはユーチューブでも配信され、京大OCWチャンネルの登録者数は約10万人に達している。

 廃止の方針に対しては「まさかの決定でショック」などと教員らがネット上で反発。その後、京大は「現在公開されているコンテンツに限りしばらくの間、運用する方策を学内の関係者と協議している」との声明を公表した。

 同センターはOCW以外にも、特定のテーマの講義を数週間にわたってシリーズで受講できるサイト(MOOC)も運営してきた。京大前総長の山極寿一さんたちが人類社会の進化などの講義を英語で行い14年の開始以降、世界各国から27万人以上の受講があったという。このほかコロナ禍でオンライン講義のノウハウを提供してきたサイトなどもあるが、いずれも閉鎖される予定となっている。

 同センター長の飯吉透教授によると、以前からセンターの廃止は決まっていたが配信業務などの引き継ぎについては未定だった。しかし今年7月になって突然、執行部から明確な理由の説明もなく、OCWやMOOCなどは引き継がない旨を通告されたという。飯吉教授は「知の社会還元のために京大が蓄積してきたコンテンツを捨てようとするのは理解に苦しむ。何らかの形で維持できないのだろうか」と語る。

 学外にも多くの利用者のいるコンテンツの廃止方針を示したことについて、京大広報課は「個別具体の検討状況は答えかねるが、時代のニーズに対応した教育内容・体制の改善を進めていく」としている。

 

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