大和市長パワハラ問題 市議会調査委が禁止条例素案 事実公表で抑止効果

大和市役所

 神奈川県大和市の副市長を昨年4月に辞職した金子勝氏(65)が大木哲市長(74)による職員へのパワーハラスメント的言動が繰り返されていると告発したことを巡り、大和市議会の調査特別委員会(井上貢委員長)は19日、パワハラ禁止を定めた条例素案を公表した。市長と井上昇副市長(71)の言動が「理不尽な理由で叱責(しっせき)するなどパワハラ傾向があった」との推認結果を明記した中間報告に基づき、職場環境の改善を目的に12月定例会に議員提案する方針を示した。

 パワハラ防止条例(仮称)素案は、市職員の防止指針で対象外だった市長ら特別職や市議のほか、市の業務委託事業者までに広げたのが特徴。第三者による相談窓口や研修の義務化、事実認定を行う付属機関の設置を求めた。罰則規定として特別職と市議は事実の公表を盛り込んだ。

 市議会は9月、素案に対する市民意見(パブリックコメント)の募集手続きを行って12月定例会に議員提案する予定。問題発覚を契機にトップまで対象にしたパワハラ条例を制定するのは全国的にも珍しいという。

 条例制定の根拠になったのは、6月に調査特別委がまとめた中間報告だ。無記名で実施した管理職アンケートで回答者の6割が見聞きを含めて被害を認識していることが判明。参考人招致で金子氏、大木市長、井上副市長らから聴取し「パワハラ傾向は推認できる」との結論を出した。

 井上委員長は「大木市長はパワハラを認めていないが、条例化によって一定の抑止効果は期待できる。他自治体の事例を調べた範囲では、議員が問題を起こして検討されたケースが多かった」と説明している。

 ただ、今回のように市長が行為者と名指しされ、事実認定の調査を審議する付属機関への諮問を拒否した場合はどうなるのかとの質問に、井上委員長は「議会が代行できるよう今後作成する規則の中で考えたい」と答えるにとどまった。

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