外国人材の確保難も。円安で企業業績に様々な悪影響広がる

 エネルギー価格や穀物価格の高騰を背景に、昨年から緩やかな円安基調が続いてきたが、今年2月のウクライナ侵攻を契機に日米金利差の拡大が強く意識され、3月以降急速な円高となった。世界的な需給ギャップによる価格高騰に加え、日本では円安による輸入価格高騰で二重の価格高騰となっている。企業のコスト負担は急増し、加工食品を中心に値上げラッシュとなっており、円安の影響は消費者レベルまで波及している。企業の想定レートと実勢レートが急激に乖離しているなか、コスト負担増を全て価格転嫁することも難しく企業業績への影響が懸念される。また、外国人材の確保にも支障が出始めているという企業も現れており、急速な円安の悪影響は様々な形で広がりを見せているようだ。

 8月15日、帝国データバンクが「円安による企業業績への影響調査」の結果を公表しているが、これによれば、円安が自社業績に「プラス」と考える企業は4.6%にとどまり、61.7%の企業が円安を業績に「マイナス」と捉えている。中でも「繊維・繊維製品・服飾品卸売」87.6%、「専門商品小売」83.9%、「飲食料品・飼料製造」83.3%などアパレルや飲食料品関連では8割超えとなっている。また「運輸・倉庫」も7割超となっており、記述欄では「値上げは荷主企業自体も業績悪化しているため、容認されにくい。また燃料を始めとする物価高で収益が悪化しており、打ち手がないのが現状」(一般貨物自動車運送)などといった記載も見られ、円安による悪影響はバリューチェーン全体に広がっているようだ。

 「マイナス」と答えた理由を聞いた結果では、「原材料価格の上昇でコスト負担が増えた」が79.2%と約8割に達し最も多く、次いで「燃料・エネルギー価格の上昇でコスト負担が増えた」が72.6%で、この2つが突出している。また「コストを販売・受注価格に転嫁できず収益が悪化した」が38.7%と4割近くの企業で既に収益悪化が強く意識されているようだ。

 自由記述欄を見ると、「外国人実習生受け入れに対して応募者の確保が難しくなってきている」(建設)、「海外子会社への送金で、為替差損が発生している」(金型・同部品等製造)、「消費者心理の冷え込みで売り上げが減った」(医薬品製剤製造)などと、原油・原材料などのコスト負担の増加に加え、外国人材の確保や為替差損、マインドの低下など、円安の悪影響は様々な形で広がっているようだ。(編集担当:久保田雄城)

帝国データバンクが「円安による企業業績への影響調査」。円安により6割超が業績に悪影響。原材料高騰などのコスト負担増、さらに外国人材の確保難などの問題も発生。様々な面に悪影響が広がっている。

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