阪元裕吾(監督)×伊能昌幸(俳優)- 映画『グリーンバレット』自由度がないのはあまり好きじゃない

『テラスハウス』のつもり

――『最強殺し屋伝説国岡(以下、殺し屋伝説)』は国岡が東京に行くと宣言する終わり方でしたが、そのころから作る予定だったのでしょうか。

阪元裕吾:

作るつもりでした。

――『グリーンバレット』はアイドルのリアリティショーのようだなと感じました。

阪元:

『テラスハウス』のつもりで脚本を書いたので、そう感じられたんだと思います。

――今作ではミスマガジンの皆さんと共演することになったので、そういった脚本にされたのでしょうか。

阪元:

そうです。ミスマガジンのみなさんと共演するなら『テラスハウス』だとなりました。国岡が前作でひどい振られ方をしているので、誰かと付き合うのではないかとツイートされていた方もいらっしゃいましたね。

伊能昌幸:

『殺し屋伝説』での振られ方はショックですからね(笑)。

阪元:

恋愛をさせることは最初から考えていませんでした。

――今作では勧善懲悪を描いていますが、そういった物語にしたのは何故ですか。

阪元:

彼女たち六人の敵は何だろうと考え時に、見下してくるやつと闘うのが一番だろうと思い脚本を書いた結果です。

――国岡も前作では仕事人的な面が強めでしたが、今作では正義感をもって戦うことになりましたね。

伊能:

人間関係の中にいると国岡もこうなるんだなという感じですね。この子たちが赤の他人であれば何もしなかったと思います。普通の人とは感覚が大幅にずれているとはいえ、合宿を通して仲間意識が芽生えたという部分が見えましたね。

――殺し屋だったとしてもそういった感情が芽生えるということなんですね。合間に入るコタツのシーンも人間臭くて面白かったです。

阪元:

あそこはアドリブです。

伊能:

最低限これは話してということがあって、大坂くんを起点に逸脱していく形で進めました。

阪元:

彼は元々そんなキャラクターじゃなかったのですが、演じてもらう中で国岡に対して「この六人の盾にならないとだめです。」と熱弁するキャラになっていきました。それを見て国岡がハッパをかけられていく話なんだなとなっていったんです。

伊能:

最後も強襲がなければ彼女たちの盾にならずに終わってましたけどね。

阪元:

訓練中に敵が出てくるのは定番ですから。

みなさんでどうぞという感じでお任せしました

――キービジュアルが『最後の晩餐』みたいだと感じたので、国岡が死ぬのかと思いました。

阪元:

そんなつもりは全くなかったんです。『エクスペンダブルズ2』でこういったポスターがあったのでなぞっただけです。

伊能:

僕は当然そういう考察も出るよなと思いましたよ。

――僕は板尾創路さんがユダ的な位置かなと妄想していました。

阪元:

そんな馬鹿な(笑)。

――板尾さんが今作に参加されたのは何故なんですか。

阪元:

無害な先輩のおじさんが必要だなと考えたんです。

――前作の山崎さんではなく。

阪元:

ギャグを強くしたいという思いがあったので板尾さんや大坂健太くんに出演していただきました。

――前作で死んだキャラを演じた大坂さんが出ることに躊躇いはなかったですか。

阪元:

別のキャラなので気にはなりませんでした。

――伊能さんは今作の脚本を読まれていかがでしたか。

伊能:

国岡の視点で言うと初めて人のために戦っているので、そういう意味で続編感はあるなと思いました。

――伊能さんはスムーズに国岡に戻ってこられましたか。

伊能:

元からそれほど役作りが必要なキャラクターではなかったので、スグに戻れました。前作では殺し屋なのに共感性が高いという意見が多かったので、今作では国岡は殺し屋で怖い人なんですよと突き放そうと意識した部分はあります。

――今作から新たに参加される方も多いですが、作品の世界観やそれぞれのキャラクターをどのように共有されたのでしょうか。お芝居の経験がない方も多かったと思いますが如何でしょう。

阪元:

『殺し屋伝説』と『ベイビーわるきゅーれ』を観てもらったくらいです。あとはみなさんの好きな作品について話しました。『鬼滅の刃』や『東京卍リベンジャーズ』が好きと言ってましたね。それを聞いて「その作品が好きなら、こういうところが勉強になるんちゃう。」みたいな話をしました。あとは「楽しんでください。」と伝えました。

――基本的にはみなさんにお任せしていたんですね。

阪元:

そうです。

――伊能さんはみなさんと何かお話しされましたか。

伊能:

みんなよく話してくれる方ばかりだったので、いろんな話をしました。実際に会うまでは年齢が離れているので上手くコミュニケーションできるだろうかと悩みましたが、全く問題なかったです。今までの現場に比べてもよく話が出来る居心地のいい現場でした。休みの日も一人でいるのが寂しかったので、理由をつけて現場に行ってました。

阪元:

(笑)。

――本当に合宿みたいな感じで、自然体で居られたんですね。

阪元:

みんなはのびのびやってもらえていましたね。

――彼女たちが演じたキャラクターはどうやって作っていったのですか。

阪元:

チームものになるんだろうなと感じたので、委員長タイプとその逆をおいて、殺しの腕はその逆にしようとその二人をまず作りました。そこから道化としてのジョーカー ピエロを置いて、『チェンソーマン』のコベニちゃんが居たり、ニートが居たり、思いつくキャラを考えていって脚本を書きました。設定とキャラクターを作って後はみなさんでどうぞという感じでお任せしました。

誰かしらが受け止めてあげていた

――本作は順撮りで進められたということですが。

阪元:

面接のシーンは別ですけど、基本はそうです。

――そこがみなさんの感情表現のリアルさに繋がっているんだなと感じました。ただ、順撮りで進めるのはスケジュール管理が大変ではなかったですか。

阪元:

キャストによって居れない日もあったので調整はしましたが、基本的にみんな現場にずっと居ることができたので大丈夫でした。みんなも頑張ってくれましたね。

伊能:

映画撮影は大変なので嫌いになる人が居ても可笑しくないんですが、そういう不安が二日目にはなくなったのも良かったです。

阪元:

このキャラならこうするということも自分で考えくれて、「憑依したんです。」みたいな話が自然と出ていたので良かったですね。

――みなさんから演技プランやキャラクター・台詞の提案などはあったのですか。

阪元:

勝手にやってました。大島さんの「軍法会議だ!」とか特に多かったですね。

――そうやって自由にできる空気がある現場だったということですね。

伊能:

ゆとりがないとアドリブは出せないですから。

――それは伊能さんが受け止めてくれるからこそですね。

伊能:

僕だけではなく、誰かしらが受け止めてあげていたんです。みんなで作れた空気感だと思います。

――伊能さんからみなさんにアドリブを振ったみたいなことはあったのですか。

伊能:

僕は変な間を作るのが好きなので、会話のリズムをあえて崩したりしました。次に何が来るかが分かったうえで待ってしまうと段取り感が出てしまうので、変な間を入れた方が自然になるんです。こういったことを許してくれる現場でしたし、国岡は言いよどむキャラクターでもあるので、そういうことは好き勝手やりました。

――そこは阪元監督への信頼感があるからこそですね。

阪元:

僕も自由度がないのはあまり好きじゃないですからね。

――ドキュメンタリーの雰囲気で撮られているので、そう言った部分が作品とも合っていますよね。

伊能:

そうですね

――本作は3月に撮影されたということは公開まで半年も経っていないんですね。編集だけでも1年かけるみたいなお話も伺いますけど。

阪元:

僕は時間をかけすぎると熱が冷めていってしまうので、最初の感覚を大事にしています。

――そんなライブ感のある映画がいよいよ公開されるわけですね。

伊能:

そうですね。自分の中でも印象に残っているシーンでは、ラストバトル前後が印象に残っています。ラストバトルでは台詞・動きを直前まで決めないで、これから始まるというタイミングで臨んだのです。そうすることでベストを出せたのでそこは注目してほしいです。

阪元:

六人がこれから女優として活躍してくデビュー作として魅力的に映っていますし、暑苦しい友情ドラマでもあります。凄く王道な作品なので、六人の友情を観てほしいです。

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