咬まれても痛くないのに、死亡するケースも…知らないと怖い“マダニ感染症”とは

最近、マダニへの注意喚起を見る機会が増えたと思いませんか?マダニに咬まれたことが原因でおこる感染症の重症化や死亡する事例が増えているそうなんです。

特に春から秋にかけて注意が必要なマダニ対策について、浜松医療センター(浜松市中区)の田島靖久感染症内科部長に、SBSラジオ『IPPO』パーソナリティの牧野克彦アナウンサーが聞きました。

きちんと対策してアウトドアを楽しんで!

家の中にいるダニとマダニの違い

田島:ダニというと家の中のイエダニやヒゼンダニを連想すると思いますが、これらとは見た目の大きさから異なります。

イエダニ」が0.7〜1ミリ位の大きさなのに対し、マダニは吸血すると体が大きくなるのですが、吸血前でも約2~4ミリぐらいという大きさ。ダニの中でも、比較的大きな部類で、肉眼でも十分確認することができます。そして、吸血すると、10〜20ミリぐらいと大きめのホクロのようなサイズになるんです。

致死率の高い病気にかかることも……

田島:よくマダニが怖いといわれるのは、咬まれると日本紅斑熱や重症熱性血小板減少症候群(以下、SFTS)など、致死率の高い病気にかかることがあるからです。

牧野:マダニに咬まれたことが原因で、死んでしまうリスクがあるということなんですね。実は静岡県内でもSFTSの罹患者が今年に入り、相次いで確認されています。これはどういう病気なんですか。

田島:マダニに咬まれてから、大体6〜14日後に熱が出て体がだるくなり、全身筋肉痛、頭が痛くなるなどいわゆるインフルエンザ様疾患の症状が出てきます。そして、その後は嘔吐、下痢、腹痛など消化器症状も認められたりしています。

牧野:ほかにもマダニによる感染で気をつけたい病気はありますか。

田島:先ほど出てきた日本紅斑熱や、稀なものでは野兎病などがあります。あとは、マダニではありませんが、マダニよりも小さいダニであるツツガムシが原因の病気として、ツツガムシ病やダニ媒介性脳炎、回帰熱などが知られています。

マダニに咬まれるとどうなる?

牧野:そもそもマダニに咬まれたら、すぐに気がつくものでしょうか。

田島:実は気がつく人というのはほとんどいません。痛みもほぼないかと思います。血を吸って大きくなった状態で咬みついているマダニを、自分のホクロだと思ったという人もいたほどです。

牧野:ではマダニに咬まれていることに気がついたら、どうすればいいでしょうか。

田島:血を吸っているマダニを無理に取ろうとすると、マダニの口の部分が皮膚の中に残って化膿する可能性があるので、できれば、皮膚科など適切な処置ができる医療機関で取ってもらうのがいいでしょう。

牧野:ということは、「吸われている!」とわかっても、慌てて自分で取らずにそのまま吸わせたままの方がいいんですか。

田島:もちろん、吸わせすぎるのもいいわけではありません。咬みついてから24時間を超えると、前述の感染症のリスクが高くなるといわれています。真夜中でも行く必要があるかまではわかりませんが、できるだけ早く医療機関にかかった方がいいと思います。

その後も熱が出たり、だるくなってきた場合も、医療機関の受診をおすすめします。受診時には、いつマダニに咬まれたかも伝えてください。SFTSや日本紅斑熱を診たことがない医師も多いので、こういう病気が心配だと伝えることが、早く、正しい診断につながると思います。

吸血前のマダニ

マダニによる感染症はいつからあった?

田島:マダニが知られるようになったのは、日本紅斑熱がきっかけです。この病気は1984年に、日本人の馬原(文彦)先生が報告して世界で認知されるようになりました。

SFTSは、2011年に中国で報告され、2013年に日本にも患者がいることが確認されました。でも、その後の調査で、実は2005年時点で日本にも患者がいたことが確認されています。

牧野:それが最近になって増えてきているんですか。

田島:実際に診断される症例も増えてきています。そのほか医療界として、SFTSは治療薬がなく、特に50歳以上の方にとって致死率の高い危険な病気だという注意喚起を盛んに行うようになってきました。

牧野:それはますます気をつけなければいけませんね。では最後にマダニ対策についても教えて下さい。

田島:マダニは露出した肌から吸血するので、帽子、手袋、長袖長ズボンなどを着用したり、シャツの裾はズボンの中に入れたりして、マダニが侵入してくるのを防ぐことが大事なポイントです。

マダニなどには、吸血対象者(動物)を感知するセンサーがあるのですが、その働きを悪くする作用があるディートやイカリジンという虫よけ成分が入った虫よけスプレーを一緒に使うのも、補助的な効果になると思います。

牧野:夏は蒸し暑いので半袖という方も多いでしょうが、草むらに入っていくときには長袖長ズボンというのは基本ですね。

田島:そして、草むらに入った後は家に入る前に、衣服にマダニがついていないかをチェック。お風呂に入った後も、ご家族にマダニがついていないかをチェックしてもらってください。リスクや適切な対応をちゃんと知って、アウトドアを楽しんでいただければと思います。

隙を作らないことが重要!

© 静岡放送株式会社