大好きな「当たり前」伝え続ける コロナ禍で秩父の魅力再発見 秩父地域おもてなし観光公社・保泉友美さん

20年にわたり、秩父の魅力を発信している秩父地域おもてなし観光公社の保泉友美さん=12日、埼玉県秩父市内

 秩父のナビゲーターとして、地元の魅力を情報発信し続けて、もうすぐ20年。「コロナ禍を通して、今まで気付かなかった地元の姿や価値観を新たに発見できた。まだまだ地域外の方に伝えるべき情報はたくさんある」

 秩父市に生まれ育ち、県内の短大卒業後、「自分で情報を発信したい」と秩父ケーブルテレビに入社。約7年間、番組制作全般に携わり、2017年からは秩父地域おもてなし観光公社の地域マネージャーとして、秩父のさまざまな観光情報を発信している。

 「秩父川瀬祭」や「秩父夜祭」で何度も山車の曳(ひ)き子を経験。「小さい頃から地域の伝統行事やイベントに毎年参加してきた。私にとっては、それが当たり前の生活習慣になっている」

 コロナ禍に入ると、伝統行事が相次いで中止になり、「当たり前の生活習慣」が徐々に崩れていった。約5年間にわたって毎日更新してきた、同公社の投稿サイト「フェイスブック」の情報発信も一時中断を余儀なくされた。

 緊急事態宣言時は、保健師に教わった消毒液の作り方などを配信し、住民の暮らしの安全・安心に徹した報道に切り替えた。現在は伝統行事が少しずつ再開され、交流サイト(SNS)や動画投稿サイト・ユーチューブチャンネル「秩父おもてなしTV」などで観光関係の情報を豊富に配信している。

 今年7月、神輿(みこし)を荒川の清流で洗い清める、秩父川瀬祭の神事「神輿洗い」が3年ぶりに行われた。神輿を担いで勇ましく川を渡り切る若者の姿をライブ配信するため、現地でマイクを握ったが、中継中に涙がポロポロとこぼれ、言葉に詰まった。

 「例年は川の流れが穏やかで、難なく渡り切っていたが、今年は急流に何度も足を取られながら、みんなが必死で神輿を担いでいた。2年間開催できずにいた、それぞれの思いが象徴されているみたいだった」。秩父への愛着はずっと変わらない。

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