摂食障害の発症リスクにシナプス関連遺伝子のコピー数変異が関与か 名古屋大学

名古屋大学などの研究者らは、ゲノムコピー数変異(CNV)が摂食障害の発症リスクに関与することを初めて明らかにした。

これまでの疫学研究から、摂食障害の発症には遺伝要因が強く関与し、他の精神疾患の遺伝要因とも一部オーバーラップする可能性が示唆されてきた。実際に、摂食障害患者の一部で、精神疾患のリスクに関連するCNVが見つかっているという。

しかし、摂食障害とCNVの関連性に関する明確な結論は未だ得られていない。そこで本研究では、摂食障害患者(70例)を対象にCNVの解析を実施し、特に神経発達症との関連が知られるリスクCNVに着目して調べ、健常者との比較を行った。なお、研究被験者は全員日本人女性である。

解析の結果、摂食障害患者の10%(7/70)で神経発達症のリスクCNVが見つかり、健常者の2.3%(24/1036)と比較して有意に摂食障害の発症リスクと関連することが確認された。

また、摂食障害患者で見つかったCNVの多くは、神経細胞のシナプスで機能する遺伝子に影響するものであることを見出した。遺伝子セット解析からも、シナプス関連遺伝子群に摂食障害患者のCNVが有意に多く集積することがわかり、シナプスの機能障害が摂食障害の病態に関与する可能性が強く示唆された。

本研究から、摂食障害と神経発達症には遺伝的要因において共通性があること、そして摂食障害の病態にシナプス機能の障害が関与することが明らかとなった。今後さらにシナプス機能障害の観点から摂食障害の病態理解が進むことで、摂食障害の早期診断法の開発や新規治療薬の開発に寄与することが望まれる。

論文情報:

【Psychiatry and Clinical Neurosciences】Contribution of copy number variations to the risk of severe eating disorders

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