大阪万博と森、よかトピアとシーサイドももち。開発が進む今、立ち止まって都市化を考える

自分をリープアップしてくれる本を、ライター目線で1冊ずつ紹介する「フクリパbooks」。前回は『友人の社会史』を紹介してくれたダイスプロジェクトのプランナー・天野加奈さんの新たな一冊は、福岡と大阪の博覧会にかかわる本です。

大阪万博が2025年に迫っていますね。
先日は、会場内施設の設計を担う20名の若手建築家が発表され、中には福岡の方もいらっしゃいました。
https://www.expo2025.or.jp/news/news-20220808-02/

「まぁでも、大阪のことやーん」と、思うべからず!
博覧会とまちの成り立ちは大きく関係しているので、これを機会に福岡のまちの歴史をたどってみるととても楽しいです。

博覧会とまちの成り立ち

万博=万国博覧会 とは少し異なりますが、福岡で1989年に行われたアジア太平洋博覧会、通称「よかトピア」は、福岡タワーや福岡市博物館など現在のももちエリアを印象づける多くの痕跡を残していて、このときに生まれたであいから、現在まで続く市の事業も少なくありません。
視野を広げて「博覧会」と「まち」との関係性をみると、大阪の太陽の塔はもちろん、フランス・パリのエッフェル塔も、博覧会をきっかけに生まれました。

象徴的な建物だけでなく、交通網も含めた都市機能の整備が、博覧会の開催と合わせて行われています。

よかトピアと海水浴場と、シーサイドももち

この夏福岡市から出版された『シーサイドももち ー海水浴と博覧会が開いた福岡市の未来ー』は、よかトピアが開かれた福岡市西郊のシーサイドももちエリアを舞台に、はじまりは蒙古襲来の歴史から現在に至るまでをひもといた本です。
サブタイトルにあるように、かつての百道の海水浴場とよかトピアについては多くのページが割かれ、たくさんの写真と共にその歴史が記されています。
海水浴場には全長160mの大桟橋に、浜に浮かぶ大鯨のモニュメント(しかもこれが広告物!)、海水浴場に住めるテント村など、今見てもかっこよくて写真映えもしそうな、羨ましいものが多くあったよう。

ちょっぴり大阪と結びつけると、よかトピアの催事構想は、日本初の万博である1970年大阪万博の催事総合プロデューサーを務めた伊藤氏による立案なのだとか。
80年代の地方博覧会ブームのなかで、福岡での博覧会がどのように差別化をはかったのかを探ると、「福岡らしさ」と言えそうなことが見えてきて面白いですよ~!

工業化へ進む都市に一石を投じる、万博の森

合わせてもう一冊おすすめしたいのが、『大阪万博が日本の都市を変えた ー工業文明の功罪と「輝く森」の誕生ー』です。

著者は吉村元男さん。
大阪の万博記念公園の森を設計し、万博閉幕後30年で、裸地の状態から生態系まで含めて森を再建するというべらぼうな計画を実現された方です。

万博記念公園がある千里の地は今でこそ緑豊かな場所ですが、もとは竹藪と農地が広がっており、これを万博のために切り開いています。
閉幕後は各省庁の機関や研究所を誘致し、東京一極集中に対抗する都市センターになることも期待されていました。当時 公害問題も声高に叫ばれていた中とはいえ、あれだけの規模と立地にある場所を、お金が生み出しにくい公園であり森にするという選択にはとても大きな意味を感じますよね。

この本では
・世界的な万博の歴史
・万博と共に進められてきた都市機能整備
・日本初の万博会場がなぜ東京ではなく大阪だったのか
・大阪万博の土地利用計画の幾度のどんでん返し
・更地に森を取り戻す緻密な計画と工業化への免罪符
・太陽の塔はなぜ残ったのか
・園内にある民俗学博物館の誕生と継承 (ここにでてくる文化の二律背反性の話と、大阪万博以前以後の文化展示のあり方の違いの話もすごく面白いです!)
・巨大都市の罪と再生
・公園を軸にしたこれからの都市計画
などに触れられ、内容は多岐にわたっています。

日に日に開発がすすんでいく福岡のまちを、まさに今、目の当たりにしている私たち。
メリットだけでなくデメリットにも目を向け、まちの在り方を考えるきっかけにもなるので、ぜひぜひ読んでみてください。
『シーサイドももち』をお供にまちを歩くのもおすすめですよ!

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新修 福岡市史 ブックレット・シリーズ 『シーサイドももち 海水浴と博覧会が開いた福岡市の未来』
福岡市史編集委員会(編集)
発行:梓書院
A5判 176ページ 並製
定価 1,800円+税
書店発売日:2022年7月29日

『大阪万博が日本の都市を変えた 工業文明の功罪と「輝く森」の誕生』
吉村 元男(著/文)
発行:ミネルヴァ書房
四六判 344ページ
定価 2,400円+税
書店発売日:2018年7月19日

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